第7話 おぅふ、なんて中二病っぽいんだ

「ふむん♪ 街にいくの……楽しみ~っ」


 ごろごろごろ~


 アイナママとのおはなしのあと、ぼくはわくわくするキモチを押さえきれず……

 ベッドの上で、何度もごろごろしちゃう♪


「もちろん、初めての街もおもしろそうだけど~」


 今回は、とにかく初めてづくしのコトがいっぱいだ♪


「まずは……馬車にのれるでしょ?」


 すっごいイナカにあるうちの村に、定期便なんてあるはずないし?

 だから街に買い出しにいく荷馬車に、乗せてもらうことになったんだ♪

 ちなみに馬車といっても、それほど速さはなくて……


「人があるくよりは、ちょっと速いっていうから……ジョギングくらい?」

「それでも歩かなくてすむから、らくちんらくちん♪」


 勇者時代に乗った馬車は、4頭建ての立派な箱馬車で、

 それこそ数時間走るごとに、お馬を交換するというゼイタクなものだった。

 速度もかなり速かったし、魔法アイテムのおかげで乗り心地もよかったけど……

 あの時はとにかく殺伐とした旅だったから、あまりいい印象ないなぁ。


「それに、アイナママといっしょ♪」

「これってデートみたいだよね~♡」


 もちろんアイナママとは、いつもおうちでいっしょにいるけれど……

 家事をしていたり、お仕事をしていたりと忙しそう。

 だけど今回は、馬車で移動するあいだは、なにもすることがない。


「だからアイナママといっぱいお話しできるぞ~ んふふ♪」

「それに、ごはんもいっしょに食べれるし♪」

「しかもお肉♡ すっごい楽しみ♪」


 この異世界の暮らしでは、お肉はいわゆるぜいたく品。

 というかぼくの村では、川や湖でとったお魚を食べるのが一般的。


「お肉はお祭りのときくらいしか、いっぱい食べられないもんね~」


 秋の終わりに収穫祭をするんだけど……

 そのときに、村でブタさんを何頭か買うんだ。


「そして解体して料理して、みんなでワイワイ食べて~」

「のこりは塩漬けにして、冬のあいだにちょっとづつ食べるんだ♪」

「シカさんとかイノシシがとれれば、それを食べられることもあるけど……」


 ふだん食べてるお魚も、ごくたまにとれる獣肉も、

 基本的には塩漬けにして保存食にするのがふつうで……

 すぐに食べたりせずに保存して、少しづつ食べるモノなんだ。


「でも、大きな街なら……むふっ♪」


 イナカの村とはちがって、街ならいつでも食肉が手にはいる。

 だからお店でお肉を食べることもできるんだ♪


「勇者時代はよく食べたけど……」


 あれはホント効率優先の、ゼイタクな旅だったからなぁ。

 まー 世界の平和がかかってたから、しかたないけど?


「あとは…ミヤビさまの【守りの加護】」

「ああ、ほんとうによかった♡」


 もちろん、加護をくださったミヤビさまがいちばんすごいけど……

 それを願ったぼくも、ちょっとはホメてもらいたい♪


「魔王はいなくなったけど……」


 それでも魔物はあいかわらずいて、人を襲う。

 それに魔族が、人族の砦とかにちょかいを出してくることもあるみたい。

 だから冒険者のお仕事は、いまでもなくならないし、

 それで死んでしまう人だって、いっぱいいる。

 けど、女性冒険者の死亡率は激減した──とミヤビさまはいってくれた♪


「冒険者ギルドのある街にいけば、それも見られるっていってたし?」

「んふふ♪ どんな防具なんだろうな~」

「もしかして【お守り】っぽいアクセサリー系かな?」


 そしてなんといっても楽しみなのは……


「やっぱり、ぼくのスキルだよね~♪」


 アイナママもいっていたけど…

 ぼくの産みのママ、ステラママはすごい魔法使いだった。

 だからひょっとしたら……ぼくに魔法のスキルがあるかもしれない♪


「魔法スキルがあれば、チカラに自信がないぼくでも、もっと強くなれるかも♪」

「あー 魔法剣士っていうのも……ロマンがあるなぁ♡」


 もちろん剣の練習もしてるけど……

 いまいち筋力とか防御力とか、オトコらしいチカラが付いた実感がない。


「それに転生してからは、いちども魔物を倒してないしなぁ」


 半人前だったぼくには許されてなかったし、

 そもそも村から出られなかったので、その機会もなかったワケで~


「でもひょっとして……スキルがあれば、それもゆるしてもらえるかも?」


 筋力がなくても攻撃魔法が使えれば、それで魔物を討伐できる。

 そうすれば……ぼくも一気に強くなれるんだ♪


「それにはまず、どんなスキルがあるか、しらべてもらわないとね~」


 面白いもので、そのスキルを【所持している】という自覚がないと……

 それは使えないことが多い。

 だから、それまでは使えなかった技術も……

 スキルの所持を知らされただけで、いきなり使えるようになった!

 な~んてハナシもあるっぽい。


「だから、ギルドで調べてもらうのか~」

「勇者時代は自分で調べられたから、そんなの知らなかったなぁ」


 そう、ゲームや小説なんかでいう……

 【ステータスオープン!】っていうアレです。

 ぼくも前世では、その魔法が使えたんだ。


「そう、魔法だったんだよね、ぼくのばあい」


 この世界には、いろいろな魔法があって……

 アイナママが使うのは、神官の【神聖魔法】。

 祈りによる神の奇跡を発動させるもの──とされている。

 その効果は回復系をはじめ、聖防壁や支援系魔法とかがある。


「ステラママが使っていたのは……」


 大気中の元素に、直接はたらきかけて発動させる【元素魔法】。

 【土】【水】【火】【風】の4つの元素を魔法で操って、

 なにもない所から、火や風を生み出す魔法だ。

 基本的に『敵に叩き付ける』事でダメージを与えるのが原則です。


「あとは……」


 精霊のチカラを借りる【精霊魔法】なんかもあるし、

 魔族が使う魔法とかもあるらしいけど……


「そしてその中でもいちばんアレなのが……」

「【勇者魔法】だよねぇ」


 勇者魔法── それは、魔族と魔物を憎む神々が……

 【対魔王】のスペシャリストである【召喚勇者】にのみ、与えた魔法。

 とにかく【魔王を倒す者】の使命に特化しているので……

 それはもう、メチャクチャ強力でチートっぽい、反則っぽい魔法がほとんど。


「そのひとつが、ステータスの魔法なんだけど……」


 その魔法は──【万物真理ステータス

 ちなみに【四文字熟語に英語読み】が勇者魔法ネーミングの基本です。


「おぅふ、なんて中二病っぽいんだ」


-------------------------------------

万物真理ステータス

 種別:勇者魔法

 状況:常時

 対象:術者、対象者、魔物

 効果:世の中の万物を見通す、勇者のみ使用を許される魔法。

    自らのステータスはもちろん、対象者や魔物のステータスも閲覧可能。

    いわゆる【鑑定】としての機能もあり、偽装されたものも看破できる。

    また敵意や好意などから【敵味方の判別】も可能である。

-------------------------------------


「そういえば、恋愛にヘタレだった前世のぼくが、アイナママに告白できたのも」

「これで好感度をこっそり調べられたから、だったなぁ」


 けど、【好感】と【愛情】は別モノだと知ったのは、そのもう少しあとのコト。

 そもそもアイナママは【慈愛の聖女】

 ほとんどの人に分けへだてなく優しく接していたから、むしろアテにならない。


「うぅ!? アイナママが前世のぼくを好きでいてくれて、ホントよかった」


 もしフラれていたら、あのあとの旅がどうなっていたか。

 ガクガクブルブル……


「ゆ、勇者魔法はほかにもたくさんあるけど……」

「この【万物真理ステータス】だけでも、異世界転生&チート小説が1本かけちゃうよねぇ」


 ちなみに魔力の消費もないから、

 勇者時代はなにかと便利に、サクサク使っていたけど……


「どうもアイナママの説明によると」

「ステータスを調べるのって、ほんと最初のときだけみたい」


 ふつうの冒険者は、ギルドに行かないとステータスは調べられないし、

 しかも有料なので、はじめてのとき以外はまず調べることはないっぽい。

 だからHPやMPの残量とかは、その人の経験と感覚でつかむモノなんだって。


「やっぱり勇者って、反則だよね……」

「ええと【万物真理ステータス】! なーんて──」


 パッ!

-------------------------------------

・名 前:クリス(人族)

・性 別:男

・レベル:LV63

・状 態:正常

・H P:102544/102569

・M P:29/29

・スキル:【剣術:LV87】【槍術:LV81】【弓術:LV72】【抜刀術:LV87】

     【盾術:LV83】【斧術:LV80】【鞭術:LV71】【格闘術:LV77】

     【体術:LV82】【暗殺術:LV85】【隠密:LV84】【投擲:LV82】

                            下画面があります▼

-------------------------------------


「……えっ!? なんで使えるのっ!?」


 ◇◆◆◇


 目の前に浮かび上がったステータスに……ぼくはあぜんとする。

 そしてそのスキルも、表示を下にスクロールさせたところ、

 数えきれない数のスキルが延々と並んでた。


「ちょ 武術系に魔術系……技術系や生活系まで……」

「めちゃくちゃスキル あるんですけど!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る