チェスとスマホと2人の時間。
山岡咲美
チェスとスマホと2人の時間。
何時も朝、冬もそろそろと終わりを告げて春の日差しが当たるブレザーの制服は少し背が暖まっていた。
高校のへの道すがら通学の自転車に追い越されながら並び歩く2人の会話が始まる。
「[日替わり問題]どうだった?」
「今日のは簡単、クイーン切ってルークでチェックメイト」
「クイーンテイク
姫香が「バン」と背中を叩いて笑い、騎士は「イテテ」と高い身長を折り曲げる。
「それより姫香、昨日のオンライン対局あれ何?」
「クイーンテイクa6チェック、キングb8、クイーンb7チェックメイト?」
姫香は「きょとん」とした表情で答える。
「ちげーよ! そこまでの流れのイヤらしさ何だよ!」
騎士は女子との距離感間違ってますよって感じに顔を近づけひきつった笑みを浮かべる。
「じっくりじっくり追い込む戦法よ♪♪」
姫香は少し目にかかるセミロングの黒髪から「にんまり」と笑みをこぼした。
「あーーあーーあーーーー! 何だお前ら朝っぱらからめんどくさい会話してんなーーーーーーーー!!」
「あっ サッちゃん♪」
「おう!
「おはよう、お2人さん♪」
「何だ佐智枝、ついにオマエもチェスに興味もったのか?」
騎士はその背丈で佐智枝を見下ろし嬉しそうに語る。
「そうなのさっちゃん♪ やろうよチェス! 今からでも入ってよ同好会♪♪」
姫香は佐智枝の手を握りしめたった2人のチェス同好会に友人の彼女を引き入れたい構えだ。
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや……」
「お2人の~~? いちゃラブ学園生活の邪魔しちゃ悪いからアタシはご遠慮させて頂きますわ!」
佐智枝は手をバタバタと振りながらバックスキップで全力2人から離れていった。
「ちぇ何だよ佐智枝の奴……」
「む~~、サッちゃーーーーん!」
□■□■
放課後2-B教室
騎士は姫香の机の前に自分の椅子を持ち込みその机の上に自分のスマホを置いた。
画面は[スマホチェス]オフライン対局、対局時計は無し。
スマホからはパチンパチンと駒音が響く。
「やっぱりチェス盤は要るよね騎士君」
白ポーンd4
「やっぱ俺んちから持って来ようか?」
黒ポーンd5
「えーーいいよ あれお義父さんの高いやつでしょ?」
白ナイトc3
「いやいや、姫香がうちに来た時使うのはそうだけど俺2つ折りの持ってるから」
黒ナイトf6
「いちいち持って来るの?」
白ナイトf3
「仕方ないよ同好会は部費で出無いし」
黒ナイトc6
「マグネットのでいいから部費で買えないかな~~~~!」
白ポーンe3
「だから部じゃ無いから部費出ないんだって!」
黒ビショップg4
「またそれ騎士君?」
白ポーンh3
「2人だとどうしても何時ものオープニング繰り返す羽目になるな姫香……」
黒ビショップf3、白ナイトテイク
「でも私楽しいよ♪」
白ポーンf3、黒ビショップテイク
姫香は何時ものように白のポーンで黒のビショップをテイクする。
夕刻の教室で静かな2人の時間がただただ過ぎていった……。
□■□■
エピローグ
「どうしたの佐智枝?」
教室の前で壁に持たれる佐智枝がクラスメイトが教室に入るのを止める。
佐智枝は口に人差し指を当てる。
「ああ……」
クラスメイトは「お盛んな事♪」とその場を立ち去る。
悠木佐智枝はチェス同好会に新入部員が入る事は無いと思った、何故ならあの2人の間に入ろうなんて者はこの学校には1人としていないと思ったからだ。
「部費は諦めてね、お2人さん♪」
彼女は皮肉っぽく笑った。
チェスとスマホと2人の時間。 山岡咲美 @sakumi
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