第9話 9ヶ月
私は公園のような所にいた。
広い駐車場と、近くに展望台でもあるのか、長い階段の続く小さな丘もある。車は他に一台も止まっていない。人の気配もない。
私は車から降り、車の側で立って待っていた。誰が来るのか分からないまま、なんだか落ち着かない気持ちで、そわそわしながら待っている。
遠くから、人が歩いて来るのが見えた。生後半年ぐらいの子を抱き、3~4才の子を連れている。
私は駆け寄りたいのに、駆け寄る事が出来ずに
(やっと、やっと‼︎)
と、思い、今か今かと子供達を連れた人が、私の側まで来るのを待っている。
その時、車に乗っていた我が子二人、急に車から飛び出し、駆けて行ってしまう。急な階段を楽しげに走って登っていく。それを見て、私も慌てて、後を追い、走り出す。子供達は足が速く、元気いっぱいで、中々、追い付けない。
丘を登り上がり、下を見下ろすと、赤ちゃんを抱き、小さな子を連れた人が私を小さな子と一緒に見上げていた。
(やっと、側まで来たのに…)
寂しいのか、悲しいのか、その両方か、沈んだ気持ちになり、今回もダメだったと思いながら、私も手元に引き取る事の出来ない子供達を我が子と一緒に見つめていた。
いつまでも、手元に来ない子の夢は恐ろしくて、口に出せず、夫にさえも話せなくなっていた。
もうすぐ臨月、無事に生きて産まれてくれる事を願い、日々を過ごす。
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