第8話 8ヶ月

 赤ちゃん籠、持ち運びの出来るベビークーファンを手渡される。誰に手渡されたかは判らない。そんな事より、やっと、子どもが手元に来てくれた事が嬉しくて、やっと抱き締める事が出来ると、嬉々として、そのベビークーファンを受け取る。早く、早くと、急く気持ちのまま、ベビークーファンを覗き込むと、中身は空だった。

 誰も居ない。空のベビークーファン。


 私は衝撃で目が覚めた。驚き過ぎて、声も出ない。震える両手を自分のお腹に持っていく。温かい。

 9ヶ月目に死産したことのある友人が、

「ある日、突然、お腹が冷たくなったんだ。」

と、言っていたのを思い出す。

 まだ、温かい。

 まだ、暗い時間。夜明けには遠く、寝直した方がいい時間帯。でも、とてもではないが、寝直す事は出来そうにない。

 お腹の子が生きて産まれて来るのか不安になるが、

 (お腹は温かい。お腹の子は生きているはず!)

そう、自分に言い聞かせ、それ以上は考えないようにして、布団に横になり、目を閉じる。



 

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