第5話
うちの学校では、他のクラスの教室には入ってはいけないという校則がある。誰にも見付からずに、このミッションをコンプリートせねば!
このミッション……名付けて、IMG作戦を! タグではない、一織のマスクをゲットする作戦、略してIMG作戦だ。
女子生徒もカップルも、教室後方は気にも留めていない。今だ!
さりげなく、なるべく足音を立てないように平静を装い後ろのドアから入る。いくら気を付けても、僕の体重を受けた床がギシッと音を立てる。とっさに生徒達の様子を伺う。大丈夫、こちらを気にしてはいない。
人が少ないのはいいが、その分静かで足音が気になる。足を床に付ける面積が少ない方がマシか? つま先歩きでまっすぐ橘さんの席へ進み、周りに見付からないよう僕の持って来た予備マスクを机の陰で広げる。橘さんのマスクと同じ形になるよう、微調整を施さねば。
ああ、良かった。さすがは見た目はギャルでも几帳面な橘さんだ。キッチリと鼻のラインに沿った形にワイヤーが曲がっている。これは恐らく、目の下から約1.5センチ程下の辺りの鼻の形だろう。いやあ、ベストだ。この辺りなら、一織フィギュアの鼻の形にも合うだろうと思っていた。
もう僕の頭の中には、このマスクを着けた一織フィギュアが見える。似合うよ、一織ちゃん。素晴らしい。
もう一度辺りを伺い、いけると判断した。素早く橘さんのマスクと予備マスクを入れ替える。すぐさま方向転換し、今度は廊下を目指す。
まだだ、まだ油断してはいけない。
このマスクを小さく握り潰してポケットに入れる訳にはいかないのだ。なるべくこの形を保ったまま、持ち帰りたい。
頭を働かせて、自分の持ち物の中でこのマスクを保存するために1番適しているのは何か、考えを巡らせる。
……体操服袋だ!
ひらめいたと同時に、2年3組の教室から廊下に出た。
やった! 無事に誰にも見付かることなく、橘さんのマスクを盗った!
ミッションクリアだ。IMG作戦は、成功した。
マスクは、この手に……ああ、このマスクを着けたい。
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