第9話 師匠の日常

 師匠がじゃがいもとレタスだけとはいえ野菜を食べてくれるようになったので、日常の生活をもう少し健康的に過ごしてほしい。


 つまり、朝に起きてほしい。

 修行に付き合ってほしい思いもあるけど、昼過ぎどころか夕方過ぎても起きてこないのは問題だと思う。


 僕より早く起きてしかも働いている時もあったから朝に起きる事は出来るはず。


 まずは師匠の一日を確認してみよう。

 もしかしたら僕が畑のお世話や食事を作っている時に起きて部屋から出て何かしているのかもしれないし。


 実は最近書庫で見つけて覚えた遠視の魔法を使ってみたいってのもある。

 他人の家の中は見れないけど、使うのは僕も住んでいる師匠の家だから使えないことはない。


 結論。


 師匠は本当に一日寝ていた。一応起きてはいるらしくゴロゴロ寝返り打っていたけどそれだけで、身体を起こす事すらしなかった。


 ま、まあたった一日見ただけで判断するのは早すぎる。


 そう思って次の日も、そのまた次の日も師匠はずっと寝てばかりで部屋からも出てこなかった。


 四日目も寝て終わりと思ったら、ようやくベッドから起きた。でもドアをしばらく見た後、大きなあくびをして水を飲んでまたベッドに戻った。

 多分、いつもなら僕が起こしているのに来ないから少し疑問に思ったらしい。でもドアを見ただけで部屋から出ないのはどうかと思う。


 こうなったら師匠が自分で部屋から出てくるまで……いや落ち着けフィル。師匠の事だ、このまま何もせずにいたら一ヶ月、もしかしたら一年ぐらい部屋から出てこない可能性だってある。


 僕の目的は師匠がどんな一日を過ごしているか。いつ部屋から出るのかじゃない。


 つまり。


「師匠おおお!! 流石に何か食べないとヤバいです!! 起きてるの知っているんですからね!! 早く部屋から出てきてください! そしてご飯! お風呂! 掃除!!」


******


「別に丸一日寝てるだけじゃないよ。朝普通に起きて、まだ眠いからうとうとするだろ。で、昼になってしっかり目も覚めてるんだけど温かい布団から出たくねえからそのまま包まってて、ぬくぬくしていたら夕方になって、そのままボーッとしていたら夜になって寝る時間になったから寝てるな。なんだ、結構起きてんじゃねえか」


 色々諦めて師匠に聞いてみたら本当に何もせず寝ているだけだった。


「ベッドから出てこないのを起きているとは言いません」

「えー、弟子厳しすぎない?」

「至って普通です。師匠が怠けすぎなんですよ」

「そんな事ないって、猫より起きてるし働いている」

「猫と人を比べないでください。それに師匠と比べたら猫の方が働いていますよ」

「あぁ、一日中ぐうたらして過ごしてえなあ」


 今も十分ぐうたらに過ごしているからこれ以上ぐうたらにならない気がする。


 いや、師匠ならぐうたらを超えた何かになりそう。

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