第8話 師匠と野菜

 師匠は筋金入りの野菜嫌いだ。


 まず普通に野菜は食べない。食べるのは肉だけ。

 そして好物の鳥肉と野菜を一緒に出した場合は野菜だけを綺麗に省いて絶対に食べない。


 それならとハンバーグを作ったら肉すら食べなかったから、今のところ師匠には肉料理だけを出している。野菜を食べるくらいなら飢え死ぬ方を選びそうだから……。


 でもこのままじゃいけない。

 いくら師匠が健康だといっても野菜を食べずにいたらいつか体調を崩すかもしれない。


 今僕の目の前には野菜の積まれたザルが三個。

 村の人達からお礼に貰ったトマトとナスとじゃがいもがある。


 これらを使って今回こそ師匠に野菜を食べさせたい。


 村の人達からの感謝のお礼として渡されたものなら流石の師匠だって食べてくれると思う。


 一口くらいなら、多分。


 そんなわけでいざ調理。


「俺酸っぱいの苦手だからトマト無理」


「ナスって食べるとお腹壊して身体も痒くなるからパス」


 ことごとく拒否された。

 ナスは仕方ないとして、トマトの酸味が気になるならと煮込んでもダメだった。トマト本来の味が苦手みたい。


 まあ、いつもみたいに何も言わずに避けたり僕の皿に入れたりせずにちゃんと理由を言ってくれているからまだいいか。


「じゃあこのポテトサラダはどうですか?」

「玉ねぎ入っているから嫌だ。あの匂い苦手でくしゃみ止まらなくなるんだよ、あとマヨネーズも脂っこいし無理」


 …………。


 この人本当好き嫌い激しいな。好きなものより嫌いなものの方が多そう。


 でもじゃがいも自体は嫌っていないみたいだから、マッシュポテトにしてみたらようやく食べてくれた。


 もしかして野菜をそのまま茹でたりしたのなら食べてくれるかも?


 色々試したらじゃがいもとレタスだけは少しなら食べてくれるようになったけど、レタスに似ているキャベツは食べてくれなかった。


何で?

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