第2話 僕と修行

 実は師匠の弟子になってから修行らしい事は一度もしていない。


 僕はすぐにでも魔法や剣術を覚えたかったのに師匠は子供にはまだ早いと言って何も教えてくれず、代わりに掃除や洗濯といった家事ばかりしていてそっち関連ばかり上手くなってしまった。


 でもあれから三年経って十五歳になった。


 僕はもう子供じゃない。


 あの後何度も何度も頼んで、三日後になと師匠から約束してもらってようやく修行を始められるようになった。

 いい加減で怠け者だけど、師匠はやると言ったらちゃんとやってくれるし、今回みたいに約束したらきちんと守ってくれるからここだけは素直に信用出来る。


******


 今日は待ちに待った初修行日。


 最初にやるのは剣術。


 真剣は危ないからお互い木刀を持って、いざ開始。と思ったらいきなり剣も向けずにこっちに来たと思ったら足払いをかけられて、転けた隙に木刀を突きつけられて一瞬で終わった。


「ず、ずるいですよ師匠! こんなの反則です!」

「いやいや、だってお前剣術の大会に出たいとかじゃなくて死告獣しこくじゅうを狩りたいんだろ。森に入れば他にも色んな魔物がいるし今みたいに不意打ちされたり群れで襲われたりするのは普通なんだって、狩りに規則も反則もないからな。お前に必要なのは剣術でなく森での狩りのやり方だろ」

「ううっ」


 反論出来ない。確かに師匠の言う通りだ。


「はい修行終わりー、疲れたから寝るわ」


 でもだからと言ってこのまま終わらせて家に戻すわけにはいかない。ので、思い切り後ろ髪を掴んで引っ張った。


「いだだだだ!! おまっ、髪掴むの止めろ!!」

「服掴んだから師匠そこ切って逃げるでしょ!! 繕うの僕なんですからね!!」


 そもそもまだ修行は終わっていない。


「剣が終わっても修行はまだあります! 今度は魔法を教えてください!」

「え、家に本あるしそれ読んだらいいじゃん」

「読むだけで使えるようになるわけないじゃないですか……」

「俺その本読んで覚えたよ」

「えっ」

「あと教えろって簡単に言うけどな、まず何を教えて欲しいんだよ。自分の得意な魔法属性や苦手な属性とかちゃんと分かって聞いているのか?」

「え、それは……」


 言われてみれば……とにかくどんな魔物も倒せる強い魔法、それしか考えていなかった。

 怪我を治す治癒魔法だって覚えていたいし、師匠が言うように僕は自分がどんな魔法が得意なのかも分かっていない。


「何もかも教えてもらうんじゃなくて、まずは自分がどんな魔法が得意で何を覚えたいのかを考えろ。んでそこから本を探して読んで、とにかく練習っ。それでどうしても分からないところがあれば聞きに来い」


 師匠が真面目な事を言っている……? いや、違う。


「それつまり普段放置して怠けるつもりですよね」

「あ、バレた?」

「ちゃんとしてください!」

「そんな怒んなって。俺がここにある本読んで魔法覚えたのは本当なんだから、じゃあなっ」

「あっ」


 言われるままに考えていたから髪を掴んでいた手を離していて、師匠はその隙をついて言うだけ言って素早く家へと戻っていった。

 逃げ足も速いんだよなあの人、こうなったらもう今日は諦めるしかない……。


「もうっ!」


 でも師匠の言うことも一理あるかも。


 僕は師匠に修行をしてと頼んでばかりで自分から何かしようとした事はない気がする……。

 

 師匠に言われた通り自分が何を覚えたいのか考えて本を読もうとは思うけど……何だろう、このモヤっとした感じは。

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