第二十四話「決戦!! レヴァイザーVSザタリアス」
Side 天野 猛
状況は空に映し出された映像である程度の現状は把握している。
無数に湧き出た敵の兵士を蹴散らしながらもどうにか現場に辿りつくことができた。
そこには傷つき倒れ伏す黒いレヴァイザー、ホーク、ハヤテ、そしてそれを守るように黒崎 カイトとリンディ・ホワイトがザタリアスと対峙していた。
「黒崎さん、それにリンディさんも――話したい事は山々ですけど後は自分で決着をつけます」
そして猛はザタリアスに歩み寄る。
お互いボロボロだった。
『私を倒せるとでも?』
「そのためにここに来ました――」
通信からだ大道寺司令が「俺の到着を待つんだ」と言うが猛は聞く耳を持たなかった。
ここには黒いレヴァイザー・・・・・・正体の当たりがもうついているのだ。
(本当に強くなったんだね)
だから今度は自分の番だと猛は決意する。
☆
Side 黒崎 カイト
『本当にいいのかリンディ?』
傍に居たリンディにそう尋ねるカイト。
衣装はプロレスのリングコスチュームだがあえて尋ねないでおく。
「構わないわ――止めたって止められそうにないもの。あなたはどうなの?」
『俺もいく。後ろのガキ共の面倒任せてもいいか?』
「うん。いってらっしゃい」
そして黒崎 カイトも駆け出した。
☆
Side 天野 猛
「黒崎さん・・・・・・」
『悪いが卑怯とは言わせんぞ――』
傍に黒崎 カイトが来た。
スーツボロボロだったがやる気らしい。
『構わん。この程度は想定の範囲内だ』
ザタリアスもボロボロだ。
だが自己修復能力があるのかどんどん傷が癒えていく。
『いくぞ!!』
「うん!!」
猛とカイトは左右に別れて仕掛けにいく。
ザタリアスは両方に光弾を撃ち込む。
猛はサイクロンフォームになり、銃で応戦。
カイトも手に持った銃で反撃するが特にダメージを受けている気配はない。
『その程度か!! ふん!!』
紫電の球体がザタリアスの眼前に形成され、電が散弾のように放射される。
それを何発か猛とカイトに直撃、激しい火花が散る。
しかし――二人は倒れない。
だが構わずにザタリアスは何度何度も雷を散弾のように放射。
二人は何発も何発も直撃し、倒れそうになるが踏み留まる。
まるでゾンビのようだ。
「カイトさん・・・・・・大丈夫?」
『俺の心配より自分の心配をしろ!!』
「意外と優しいんだね」
『気色悪いこと言ってないで何か打開策を考えろ!! このままじゃジリ貧だぞ!!』
「そうだね――」
カイトの言う通り、このままでは手も足も出ないまま負けてしまう。
思いついたのがバニシングフォームだが、アレを使うには体力が足りないし危険すぎる。
今使えても十秒も保たないだろう。
(それでもやるしかない!!)
十秒に全てを懸けることにした。
銀色のレヴァイザーになり、赤いオーラが周囲に吹き荒れる。
そして――
『なっ!?』
ザタリアスの眼前に、まるで瞬間移動したかのように移動する。
そして何度何度も殴りつける。
一撃一撃がとんでもなく重い。
拳で突き刺しているような感覚。
一秒間に嵐のような連撃をお見舞いして吹き飛ばし――追撃で吹き飛んだ相手の背後に回り込み吹き飛ばしてさらに猛追、レヴァイザーキックをかまして地面に叩き付ける。
大きな土煙が起きた。
そして猛は限界が起きてその場にひざまつく。
『今のは中々だったぞ!!』
そしてザタリアスの巨体がレヴァイザーに迫り来る。
『もらった!!』
そこを狙って黒﨑 カイトのブラックセイバーの必殺技、黒い不死鳥になって相手に飛び込む「フェニックスダイブ」を発動。
ザタリアスの側面――右腕に直撃するが――
「カァ!!」
『なに!?』
衝撃波のような気合で吹き飛ばされ、反撃のエネルギー弾が直撃。
カイトはその場に倒れ伏す。
『どうやら貴様達も限界ではないのか?』
「それでも・・・・・・僕は――」
猛も正直言うと限界だった。
連戦やバニシングフォームの使用でもはや戦う力は残されていない。
立っているのがやっとの状況。
逆転の道筋が見えないが・・・・・・
「諦めたくない!!」
瞬間――心が、体が燃えたぎる。
☆
何時の間にか宇宙空間にいた。
精神的な宇宙空間。
以前、ブレン軍が襲来した時――学校の校舎でスティンゼルと戦った時に訪れた場所だ。
眼前には――目元ら辺が暗くてよく分からないが猛とソックリな少年がいた。
「また会ったね」
「うん――」
「簡単な質問をしよう。君は何のために戦うの?」
その質問に猛はこう答えたい。
「誰かを助けたい。手を伸ばしたい。そのためにも、ザタリアスを倒したい」
「なら――」
「でも自分の身を滅ぼすような危ない力は入りません! 強大な力を得る反面、人間を止めたりとかそう言うのはいいです!」
と、猛は必死に念押しする。
相手はクスクスと笑いながら続けてこう尋ねた。
「じゃあ、君はどんなヒーローになりたいんだい?」
「分からないけど――とにかく敵をただ倒すだけの力はいらない。だけど今は――」
「上手く言葉に出来ない感じかな・・・・・・大丈夫。創星石は応えてくれる。それに君の友人達も――」
☆
そして天野 猛は胴体の丸い出っ張り部分を開閉させて、そこに手を突っ込み、青い縦長の携帯端末を取り出す。
携帯端末には黒いレヴァイザーの姿が映し出されていた。
その画面に猛は迷わずタッチする。
『なっ!?』
そして黒いレヴァイザーは光の玉となってレヴァイザーの元に向かい、そして一つになる。
『な、なんだと!?』
さしものザタリアスも驚いた。
レヴァイザーと黒いレヴァイザーが合体。
右半分が通常のレヴァイザー。
左半分が黒いレヴァイザーになっていたのだ。
誰もが驚いた。
驚愕の新フォームである。
『今は言いたい事は沢山あるが――いけるな、猛!?』
『うん!!』
黒いレヴァイザーに猛は返事する。
『馬鹿な!? ありえない!? まさか黒いレヴァイザーも創星石由来の鉱物なのか!? それとも創星石にそんな力が・・・・・・』
などとザタリアスは混乱していた。
『二人で一つ!! レヴァイザーWだ!!』
『猛、そのネーミングちょっと危なくないか?』
などとやり取りをしつつ二人はザタリアスに殴りかかる。
とても速い。
本当に一瞬でザタリアスの眼前まで移動して右の拳がザタリアスの頬を捉えた。
ザタリアスの三mの巨体が数歩、引き下がる。
『は、はやい! それにパワーも!』
『フォームの組み合わせ! いけるか!?』
『うん、任せて!!』
黒いレヴァイザーの問いに猛は元気よく答えた。
そして全身が赤く厳つくなり、尻尾や角も生えている。
『名付けてフレイムバッファロー!!』
『ノリノリだね・・・・・・まあいいけど』
猛のテンションの高さに少し呆れる黒いレヴァイザー。
炎の塊になってザタリアスの胴体に突進。
轟音と一緒に大爆発が起きた。
『が・・・・・・がは・・・・・・馬鹿な!? 馬鹿な!? ありえない!? ありえないぞ!?』
ザタリアスは胴体をゴロゴロと転がり、激しい動揺を見せる。
ホーク・ウィンドウは「一体何がどうなってんだ」
ハヤテは「凄い・・・・・・」
黒崎 カイトは「ハチャメチャすぎる」
リンディ・ホワイトは「ちょっとこれはお姉さん想定外だったわ」
と、反応を見せる。
遠くでは城咲 春歌も「なんか楽しそうですね」などと思ったり。
揚羽 舞は「なんつーことしてくれてんのよ」と愚痴り、天村 志郎は目を輝かせていた。
アーカディア司令部は言葉を失い、司令もビックリしていた。
『まさか――こんな土壇場で――だからこそ手に入れる価値がある』
ザタリアスは煙を挙げてよろめなきながらも立ち上がる。
『ならば――!!』
ザタリアスが巨大化した。
大体50mぐらいに。
ブレン軍のロボット相手に戦ったサイズだ。
『嘘でしょ!? まさかの巨大化!?』
猛は驚き、
『相手も形振り構わなくなったか!?』
黒いレヴァイザーも驚愕する。
その隙にザタリアスは角から放電を撒き散らす。
その放電攻撃では地上は破壊の嵐が吹き荒れ、吹き飛ばされていく。
『『うぉおおおおおおお!!』』
猛と黒いレヴァイザーはそのまま飛び上がり、ザタリアスに一撃を入れようとするが――
『ふん!!』
巨大な右拳で殴られて吹き飛ばされる。
大きな土煙が出来上がった。
土煙が晴れるとレヴァイザーと黒いレヴァイザー二人が横たわっていた。
どうやら合体が解けたらしい。
「まだだ――」
それでも猛は立ち上がる。
「創星石だけじゃない。皆を、自分を、信じて、何度でも立ち上がる!!」
『だがどうするんだ!? この学園に巨大ロボットでもあるのか!?』
精神論だけではどうにもならない。
先程の合体だって奇跡のようなものなのに。
そう何度も奇跡は起きないだろう。
遠回しに黒いレヴァイザーは猛にそう語りかける。
『猛さんなら――やれます――』
「春歌ちゃん?」
ここで春歌から通信が来る。
『私達は何度だって奇跡を手繰り寄せてきました。私だって出来たんです! 猛さんなら何度でも奇跡を引き起こせる筈です!!』
力強く春歌にそう言われる。
――自分の想いを、胸の高鳴りを信じてごらん。創星石はきっと応えてくれる。
さらには謎の空間で出会った猛と瓜二つの少年の声までした。
(自分の想い――胸の高鳴り――)
それを確かめるように猛は胸に手を当てる。
☆
ザタリアスは言った。
――こうしている間にも新たな侵略者が地球を狙っているかもしれない。平和を脅かそうとしているかもしれない。それから地球を守る仕組み作りをしているだけだ。
――理想を偉そうに語るだけでは世界は変えられない。最後は力なのだ。力がなければ理想など実現できない。
これもまた残酷な真実。
だが黒いレヴァイザーは言った。
――お前の言う事は真実だとしてもお前のやり方を認めるつもりはない!!
――お前は間違えている! お前は地球連邦や日本政府を見下しているがやってる事はその見下している連中となんら変わりがないじゃないか!?
☆
周囲では破壊の嵐が吹き荒れ、巻き込まれそうになる中でふと猛は巨大化したザタリアスを見上げて思った。
「巨大化――出来るかな?」
『いくら何でもそれは――』
「今ならいけそうな気がする」
『おい――』
黒いレヴァイザーは不思議といけそうな予感がした。
猛から目映い光が発光している。
見ているだけで心が暖かくなるような――そんな光だ。
「言葉だけじゃ、想いだけじゃ世界は変えられないかもしれない」
猛は「だけど」と言葉を続ける。
「力だけでもダメなんだ――そこに優しさや思いやりがなければ――」
意を決して叫ぶ。
「モード、ギガンティック!!」
そして猛は――
巨大化する。
☆
Side ザタリアス
ワケが分からなかった。
メカメカしい外観になっているがレヴァイザーが巨大化、いや、ロボットを召喚した?
ともかく今の自身と同じサイズの青色の何かが誕生した。
誰もが言葉を失っている。
特に言い出しっぺの春歌は「幾ら何でもこれは想定外です!? これ私の責任ですか!?」と涙目になって周囲に訴えていた。
王乃 纏とかは爆笑しているが。
周囲がそんな様子でも、とても滑らかな動作で、巨体に似合わない素早さで近付いて――
顎に相手のアッパカットが見事に決まった。
音の壁を突き破る程の衝撃で天高く昇っていき――周囲に宇宙が見える程の高さまで吹き飛ばされたようだ。
衛星軌道辺りかもしれない。
そして眼下から――地球から大気圏を容易く突破してレヴァイザーが追いかけて来た。
『なめるなぁああああああああああああああああ!!』
『!!』
ザタリアスの一撃が巨大レヴァイザーの顔面に決まる。
『ぐぉ!?』
だがお返しの相手の拳が胴体に入った。
ザタリアスは怯まずに殴る、殴る、殴る。
『なんなのだ!? なんなのだお前は!?』
ひたすらに殴る。
怒りの感情を乗せてひたすらに殴る。
『確かにお前達は有象無象にも関わらずよく粘った!! だが、最後にJOKER辺りが立ち塞がるかと思えば――なんでお前のような奴が唐突に現れたんだ!?』
と言いながら殴る。
そして最後に――
『お前は一体なんなのだ!?』
大ぶりの一撃を――レヴァイザーは腕を掴んで受け止め、殴り返した。
『僕は天照学園中等部二年生、ヒーロー部の――天野 猛!!』
『なにを――』
『正直今の自分が正しいのか分からない!! 僕はテレビの中のヒーローでもないし、テレビの中のヒーローのように上手い言葉は思いつかない!!』
『なにを言っている!?』
『自分のやりたい事に正直に!! 自分の言いたい事を真っ直ぐに!! 恐れずに相手にぶつける!! それが今自分が出来る精一杯のことだから!!』
そして猛は手を差し伸べた。
『ザタリアス!! 人は誰も彼もがヒーローになれるわけじゃない!! 時として誰かが悪魔に魂を売らないと救えない時もある!!』
とにかく猛は必死に叫んだ。
自分の気持ちを。
全て吐き出すつもりで叫ぶ。
『何かを犠牲にしないと救えない世界もある!!』
猛はブレンとの最終決戦の時乃闇乃 影司の事を思い浮かべながら猛は言った。
『だけどそんな方法とやり方じゃ救いたい世界はメチャクチャになる!!』
ブレンとの戦いで荒廃した町を思い出しながら言った。
『だから変わって、ザタリアス!!』
ザタリアスの返事は禍々しい光線だった。
それが巨大化したレヴァイザーの全身を包み込む。
『理想論だけで世界が救えてたまるか!!』
『だとしても!!』
『ッ!?』
巨大化したレヴァイザーは多少体が焼け焦げた程度だった。
『だとしても理想を求めないと何もはじまらないんだ!!』
『ふん、平行線だな――私は私のやり方をつもりはない!! 平和を掴みたいなら!! 理想を押し通したいなら!! その拳を握ってみせろ!!』
『・・・・・・はい!!』
そしてレヴァイザーの左の拳が緑色に輝きはじめる。
『――創星石の輝き・・・・・・いや、違うな。これは人のオモイの――』
ザタリアスの視界が緑の光に染まった。
☆
Side マスクコマンダー
目も眩むほどの緑色の光が地上を照らす。
決着が付いたのだろうと思った。
対峙していたDrジャスティスは――
『今回はここで引き下がった方が良さそうだ・・・・・・良い物を見させてもらったからな』
と、退散するつもりのようだ。
『次は何を企むつもりだ?』
『私のやる事は変わらないさ・・・・・・精々息子を大切に育てることだな』
そう言ってDrジャスティスはその場から消え去った。
マスクコマンダーはテレポートだろうと考えたが今はともかく混乱している学園の事態収拾と――天野 猛のことで頭が一杯だった。
成長を喜びたいが、そう成長をせざるおえない状況においやってしまった事に自責の念を覚えた。
だが猛は、自分の息子きっと今もこれからも進み続けるんだろうなと父として思った。
☆
Side 天野 猛
周囲が瓦礫やクレーターだらけとなった地上に降り、元のサイズに戻ると出迎えてくれたのはホーク・ウィンドウとリンディ・ホワイトだった。
「他の皆は?」
「さあな――祝いの言葉ぐらい言ってけばいいのにな」
「ホーク君の言う通りね。まあ流石に合体とか巨大化とかはお姉さん想定外だったけど・・・・・・」
「自分でも驚いてる――て、リンディさん? 改めてみると凄い恰好ですね? その姿で戦えるんですか?」
リンディ・ホワイトの衣装は白いハイレグボンテージコスチュームだ。
正直中学生男子には目に毒である。
「心配してくれてありがとう。これ一種のパワードスーツなのよ」
「だからと言ってそんなデザインじゃなくても」
「ふふふ♪ こんなご時世だからね。体張って宣伝とかもしてるのよ♪ 暇だったら彼女と一緒に女子プロレスどう?」
「中々度胸入りますねそれ」
と、猛は顔の下半分を手で覆いながら真っ赤にしながら言った。
「今日の主役はアナタね。まあヒーローインタビューとか色々あると思うけどまずは司令と合流してね」
そう言ってリンディは去って行った。
この後二人は司令と合流。
ザタリアスの兵士もいなくなり、空のモニターもザタリアスの消滅と一緒に消失。
混乱も徐々に収束しつつあるとのことだ。
「これから町の復旧作業などで忙しくなるが――ともかくご苦労だった。ここから先は俺達に任せてまず君達はゆっくり休んで欲しい」
とのことだった。
猛とホークはその言葉に甘えることにした。
そして猛は春歌に通信を入れてこう言った。
「あ、春歌ちゃん。終わったよ・・・・・・それとあの黒いレヴァイザーは――」
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