第二十一話「王渡 志輝との決着」
Side 天野 猛
「王渡 志輝・・・・・・」
互いに変身した状態で対峙する。
正直言うとプリティア戦での疲れでしんどいがやるしかないだろう。
「身体が――大丈夫なんですか?」
当然春歌が声をかけるが彼女も自分と同じくボロボロだ。
二人掛かりでも勝てるかどうか。
「葵ちゃんは?」
「私も正直――友香も似たようなもんでしょ」
柊 友香や橘 葵の二人も同じようだ。
四人掛かりでも勝てるかどうかと言う状況だ。
『卑怯ではあるが、まあ運が悪かったと思って諦めてくれたまえ』
(やるしかない・・・・・・)
猛は覚悟を決めて戦う決意をする。
通信からは逃げるように言われるが背を見せて逃げられる相手でもない。
『プリティア、君はどうする?』
「――ッ」
『まあいい。好きにするといいよ』
プリティアにそう言って王渡 志輝は歩み寄る。
『本音を言うとこのタイミングで仕掛けるのはどうかと思ったけどね――』
「だけど退いてはくれないんでしょう?」
『このタイミングを逃せば次は何時になるか分からないからね。ザタリアスの奴もそろそろ動き出すタイミングかな』
「ザタリアス――今回の騒動の親玉か」
『そう言う事になる。じゃあはじめようか!!』
「ミックス!! フレイム、サイクロン!!」
天野 猛はフレイムとサイクロンを混ぜ合わせた力。
『じゃあ僕も最初から飛ばしていくか』
あの時、王渡 志輝が見せた赤い龍の力が宿ったような龍騎士然とした姿になる。
騎士の姿に禍々しい紫色のオ―ラや赤いドラゴンの尻尾と羽、角、胴体の赤いドラゴンの頭部を模した飾りがつけも変わらずである。
お互いフォームその物は短期決戦の構えだ。
しかし戦いその物は静かな物で様子を探りつつも攻撃を仕掛けると言う物だった。
「何を考えているの?」
『うん? まあ最後の戦いになるだろうし、少しぐらい味わってもいいかなと』
(本当にそうかな?)
王渡 志輝は精神構造は常人には計り知れない部分はある。
だが今回は不気味なところがあった。
『まあ、だけど――本当は守備に徹して燃料切れを起こすのを待つのもいいんだけど――それそそれで面白くない』
「ッ!!」
そこから王渡 志輝の猛攻が始まった。
(こちらの攻撃パターンが読まれている!?)
正直このフレイムとサイクロンを掛け合わせたフォームは二回目でまだ慣れないフォームだ。
さらに王渡 志輝の天才的な戦闘センスによる物なのか、一度見た攻撃は見切ったと言わんばかりに此方の攻撃を見切ってカウンターを入れてくる。
「くっ!?」
そして通常フォームになって転がり込む。
連戦な上に格フォームを混ぜ合わせたミックスの連続使用は負担が大きかった。
「ここまでなのか――」
勝てない。
そう思った矢先。
「猛さん!! 頑張ってください!!」
春歌の呼び声が――
「猛さんなら勝てます!!」
柊 友香の呼び声が。
「私も信じるわ!! また奇跡を起こせるって!!」
橘 葵も応援する。
『私も信じます』
オペ―レーターの女性も。
『司令として本当は撤退を薦めなければならないのだが――あえてこう言おう!! 必ず勝利して帰還してみせろと!!』
司令である大道寺 リュウガも――
『続けてこう言おう!! 君が見てきたヒーローは、フォームの強さだけが本当の強さだったのか!?』
「それは――」
『自分を信じるんだ。必ず勝てる!!』
「はい!!」
そして天野 猛は立ち上がった。
その顔は絶望ではなかった。
猛は駆け出す。
『こう言うドラマは苦手なんだけどね――まあ最後ぐらいはいいかな』
そう言って王渡 志輝は攻撃を。
胴体のドラゴンの飾りからの火炎弾。
角からの雷撃。
時にかわし、時に拳の必殺技で弾き、近付いていく。
『こう言う手ならどうする?』
そして空中に飛び上がり、逃れようとするが――
『はああああああああああ!!』
レヴァイザーは跳躍して追いかける。
王渡 志輝は翼とマントを動かして迎撃しようとする。
猛は右手を突き出して
「でや!!」
『!?』
エネルギー弾が放たれた。
威力は大したことはない。
初見のまさかの攻撃である。
悪の組織部のホーク・ウィンドウなどが独自に鍛錬して気を使った攻撃を編み出したように猛も編み出していたのだ。
「とった!!」
『なっ――』
その僅かな隙。
左腕で相手の身体を掴む天野 猛。
そして右腕の拳にエネルギーを纏ったレヴァイザーパンチで殴る。
『ぐっ!?』
いそんなにダメージは通らない。
だが一度でダメなら二度。
二度でもダメなら三度。
何度も何度も殴りつけてそのまま地面に落下させる。
そしてレヴァイザーは、天野 猛は跳躍した。
逆回りして天高く飛んだ。
そして両足を揃えて天野 猛は――
「レヴァイザー!! ドロップキック!!」
両足にエネルギーを収束させての一撃。
王渡 志輝は胴体のドラゴンの頭部を模した飾りからエネルギーを放って迎撃しようとする。
「猛君!!」
柊 友香の
「猛!!」
橘 葵の
「猛さあああああああああああああん!!」
城咲 春歌の叫び
三つの声が猛を後押しするように猛の必殺技の破壊力と勢いが増していく。
そして――
『ぐあああああああああああああああ!?』
猛の渾身の一撃が王渡 志輝に着弾した。
その一撃で王渡 志輝の変身が解けてゴロゴロと転がり込んだ。
「ハハハハハ――まさかこんな形で負けるとは――ヒーロー番組とかでは新たな強化フォームとか出して圧倒する流れだと思ったんだけど」
倒れ込みながら王渡 志輝は笑い、猛に語りかける。
「こう言うパターンもあるにはあるんだよ」
「そうか。自分は全く興味が無かったからね。勉強不足だったよ・・・・・・」
さっきまで死闘を演じていたとは思えない両者のやり取りだった。
「見てください!! 町を覆うバリアが――」
春歌が言うようにバリアが消滅していく。
「どうやらザタリアス本人のお出ましのようだね」
「なんだって!?」
王渡 志輝の一言に猛は驚く。
「プリティア、君も逃げた方がいい。僕と同じく処分されるだろう」
「私の心配しているつもり? あなたはどうするの?」
「流れに身を任せるさ――」
王渡 志輝は「それに質問がある」と猛の方に顔を向けた。
「なぜ勝てたんだい?」
「正直言うと心は折れ掛けていた。だけど友香ちゃん、葵ちゃん、春歌ちゃん――数え切れない皆が僕を折れた心を繋ぎ止めてくれた」
「ふはははは。人の闇しかみてなかった僕には全く理解できないな。まだ創星石の隠された力がどうとかの方が分かり易いよ」
「ごめんだけど呑気に話をしている場合でもないから――」
天野 猛は空を見上げる。
学園島の彼方此方に何かが降り注いでいるのが見える。
「ザタリアスのブラックトルパーだ。まあ戦闘員って奴だね。一体一体は大したことはないが――この雨のような数を視ると本気で勝負に出たみたいだ」
「そう――」
「狙いはまあセントラルタワーだろう。あそこは学園島の中枢部だから」
「どうしてそこまで教えてくれるの?」
「僕のルールに沿ったまでだ。礼には及ばない――君は行くのか?」
「うん。行かないとダメだから」
「そうか――」
猛は決着をつける覚悟を決める。
「私はお暇させて頂くわ。じゃあね」
そしてプリティアは地面に展開された魔方陣に潜り込むように逃げていった。
「逃して良かったんですか?」
「今はそう言う場合じゃないでしょ。それと王渡 志輝の事や皆の事、頼める」
「え? あ、はい」
春歌は一瞬戸惑ったが返事した。
「僕も守るか・・・・・・ははは、成る程。これがヒーローと言う奴か」
王渡 志輝は顔を手で覆ってそう言った。
猛の傍に青い大きなスクーター。
専用マシンが駆け寄り、猛はそれに乗り込んで颯爽と姿を消す。
☆
Side 黒いレヴァイザー
「くそ!? なんて数だ!?」
セントラルタワー。
そこで黒いレヴァイザーはザタリアスの先兵、ブラックトルパー達と戦いを繰り広げていた。
とにかく数が多い。
メダルの力を使って粉砕していく。
『聞くがいい。我が名はザタリアス。まずはお前から血祭りにあげてやろう』
そして天空から何かが落下してくる。
煙が晴れるとそこにいたのは赤い一つ目で黄色い二本角の黒い兜。
禍々しく力強いシルエットの漆黒の鎧。
マントにも見える大きな黒色の翼。
各部の金色の装飾。
体長は三mはあるだろう。
『お前がザタリアス!! 今回の騒動の真の黒幕か!!』
『光栄に思うがいい。お前が最初の贄となるのだ』
そう言って紫色のオーラーをジェット噴射のように噴出。
大気が揺れ、地響きが起きて、ザタリアスの真下の地面に軽いクレーターが出来る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます