第二十話「クラスメイト」

 Side 城咲 春歌


(ダメージを与えれば洗脳は解除されるとは思うけど――)


 相手はクラスメイト。

 柊 友香。

 橘 葵。

 扇情的な。まるでサキュバスのようなスーツを身に纏い、襲い掛かってくる。


 そしてプリティアも――


「また!!」


 プリティアはクラスメイトもろとも攻撃してくる。

 春歌はそれを庇い、そして守ったクラスメイトからも攻撃を受けながらも戦闘を続行する。

 猛との連携は分断されている状態だ。

 

 対して相手の連携は洗脳されていて機械的ながら見事であり、空中を飛び回り、地上を掛け、時には跳ねて此方を機動力で翻弄して攻撃を仕掛ける。

 

(せめてプリティアさえどうにか出来れば――)


 そう思ってしまうが今の状況では無理だ。

 

「思い出してください!! 友香ちゃん!! 葵ちゃん!! 目を覚ましてください!!」


 そう呼びかけるが無反応。

 無情にも攻撃しかけてる。

 

「負けないでください!! こんな卑劣な手段に!! 私は二人と戦いたくありません!!」


 それでも呼びかける。

 上手い言葉なんて選べない。

 ただただ必死に呼びかける。


「あははははは!! 馬鹿みたい!! そんなんで洗脳が解けるわけないじゃない!!」


 プリティアは宙に浮かびながら笑う。


「私は諦めない!! そのための想いと力はここにある!!」


 しかし春歌は諦めようとしなかった。


 

 Side 柊 友香


 私は何をしているんだろう?

 

 どうして春歌ちゃんと戦っているんだろう?


 こんなにも悲しくて。


 こんなにも辛くて。


 でも止められない。


 やめたいのに止まらない。

 

 だけど春歌ちゃんが応援してくれている。 


 春歌ちゃんが信じてくれる。


 こんな無力でも私でも。


 役に立ちたい――


 猛君や春歌ちゃんのために!!



 Side 橘 葵


 私は春歌が羨ましかった。


 危険なことも遊びじゃない事も分かっている。


 だけど自分も凄い力が欲しくて凄いなにかになりたいって思ってしまう時があった。


 だから罰が当たったのかなと思った。


 いや、違う。


 本当は二人がどんどん遠い存在になって寂しかったんだ。


 だから同じになりたかった。


 願っちゃいけなかったんだと思う。


 そんな自分でも猛や春歌は私に手を差し伸べてくれる。


 猛も私を止めようと必死だ。


 庇ってくれる。


 あの悪魔のコスプレした女の子からの攻撃から守ってくれる。


 にも関わらず攻撃してしまう。


 ――ごめんなさい。


 猛の声が聞こえる。


 ――ヒーローになってから忙しくてどんどん疎遠になって。


 違うの。


 ――その事に今迄きづけなかった。


 違うの!! 私の心が弱いから!! だからこんなことに!!


 ――誰だって間違える。間違えた後は反省して立ち上がるんだ。


 立ち上がる? こんな私に? どうやって?


 ――やって見なくちゃ分からないよ。


 

 Side プリティア


(なに? この不快な気持ちは――)


 忌々しい。

 人間の不確かな力。

 感情。


 愛、勇気、信頼、友情・・・・・・


 そんな不確かな力など否定してくれる。


 そんな物で奇跡などは起きはしないと。


(なのになんなのよこれは!? あいつらの持つ変身アイテムの力!? まだ私が本調子ではなかった!? 私は魔界を統べる存在になるのよ!? なのになんなのよこれは!?)


 徐々にだが洗脳が解け始めている。


 天野 猛と城咲 春歌から未知のエネルギーを感じる。


 いや、洗脳した二人――柊 友香と橘 葵からもそのエネルギーが。


 ありえない。


 だが現実として存在している――


「認めない!! 纏めて消し去ってやる!!」


 プリティアは洗脳した二人もろとも消し去ろうと考えた。

 


 Side 天野 猛


『プリティアから高エネルギー反応!? また纏めて消し飛ばすつもりよ!! 逃げて!!』


 本部からオペレーターの女性の声が聞こえる。

 だけどその指示には従えなかった。

 大切なクラスメイト。

 春歌もいる。


 だから――


「ミックス!! ライトニング、アクア!!」


 胴体がノーマール。

 右側が黄色のライトニングフォーム。

 左側が水色のアクアフォーム。

 防御力とパワーを兼ね備えた形態。

 攻撃を受け止める準備をする。


「猛さん――」


 傍に春歌が並び立つ。

 背後にはどうにか抗っている二人がいる。

 考えは同じだろうと猛は感じ取った。 


「止めるよ」


「はい!!」


 そしてプリティアの攻撃が解き放たれた。 

 極太の目映い閃光。

 それを真正面から二人で受け止める。


「はあああああああああああああああ!!」


 両手に電撃と水のエネルギーの壁を作って必死に止める。


「フィールド調整!! 出力全開です」


 春歌もバリアを張って止めている。


『二人ともスーツだけでなく身体に負担が――』


「でも――そうしないと助けられないんだ!!」


 本部の呼びかけに反して猛は力を込める。


「ごめんなさい!! 無茶をさせてください!!」


 春歌も謝罪しながら必死に力を込める。


「無駄よ!! このまま押し切ってあげる!!」 

 

 プリティアはこのまま決着をつけるつもりだ。

 

「諦めてたまるかああああああああああああ!!」


「猛さんのために!! 友香ちゃんや葵ちゃんのためなら何度だって奇跡を起こしてやります!!」


 それでも二人はジリジリと押し込まれながらもクラスメイトを守る。


「まだだ。まだ――まだ力を――レヴァイザーの力はこんな物じゃない!!」


「そうです! 猛さんだけじゃない! 皆のためならどこまでもいける筈です!!」


「まだどこにそんな力が!?」


 プリティアは驚愕した様子だった。

 押しているのは自分の筈なのに。

 なのにこれは一体と――


「なっ――」


 洗脳が解けた二人、柊 友香と橘 葵。

 その二人がプリティアの閃光を押し返すのに手伝ってくれていた。


「二人とも洗脳が解けたんですね!!」

 

 喜ぶ春歌。


「はい、二人の御蔭です!!」


 友香が泣き笑い、


「もう、皆して暑苦しいんだから――」


 葵も照れくさそうに涙を流していた。



 Side プリティア


「そんな・・・・・・こんなことが・・・・・・」


 とうとう魔力切れを起こして限界を迎えてしまう。

 プリティアは地べたに這いつくばった。


「降伏してください」


 春歌が降伏を促すがプリティアはと言うと――


「私は!! 私はまだ負けてない!! 負けてないんだから!!」


「いいや。君は敗北したんだよ」


「ッ!?」


 そして何処からともなく姿を現わしたのは――


「王渡 志輝――」


 相手の名を呼んで猛は身構える。

 春歌もだった。


「このゲームの終わりも近い。決着をつけよう」


 そう言って王渡 志輝は変身した。

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