第九話「二つを一つに」
Side 天野 猛
天野 猛は王渡 志輝。
城咲 春歌は他の隊員と一緒にデザイアメダルの雑兵を相手にする形となった。
『天野 猛か! 君なら私を終わらせることができるかな!?』
「正直あんまり関わりたくないタイプだね」
『ハハハ! それが普通の反応だな!』
レヴァイザーフレイムフォームになり、互いに剣戟をぶつけ合う形になった。
『どうしたどうした? ブラックスカルや宇宙人を退けた実力はその程度ではないだろう?』
「そんな安い挑発――」
『まあ引っかからないよねこんな挑発』
などと舌戦なのかどうかも分からないやり取りをしつつ戦う。
『だがこのままでは千日手だ。ここは一つ――手を加えよう』
そう言ってメダルをもう一つバックルベルトに装填する。
すると禍々しい紫色のオ―ラと一緒に赤いドラゴンの尻尾と羽、角が生える。
ショルダーアーマー、剣や盾も形状が変化する。
そして胴体には赤いドラゴンの頭部を模した飾りがつけられる。
「ブラックスカルと同じ――」
『ムクロ――いや、ムクロの精神を乗っ取っていたメダルは己の能力を複数追加する方向だったが、こう言う別のプランも考えていたのさ』
平成ラ○ダーの能力でも参考にしたのだろうか。
赤いドラゴンの力を身に纏った騎士と言った感じで不謹慎ながら猛は格好良さを感じていた。
『お互い互角だったんだ。こうなったら私の勝ちは確定だね!』
「!!」
炎の斬撃。
炎を身に纏った尻尾。
マントすら凶器として機能し、空中を飛び回り、切り裂いてくる。
『これで死んでくれるなよ!』
「くっ!!」
そして胴体のドラゴンの飾りから炎のブレスが吹き荒れた。
猛烈な勢いの攻撃の数々に猛は手も足も出ず吹き飛ばされる。
「猛さん!?」
「大丈夫。まだやれる!!」
戦闘中の春歌の悲鳴に猛は強気で返す。
『ですが敵の戦闘能力は――』
オペレーターの女性の声が聞こえるが―
「大丈夫。手はある」
『まさかバニシングフォームを――』
「違う。前々からあった手だけどね」
即座にそれを否定した。
『猛君。やれるんだな?』
オペレーターの変わりに大道寺 リュウガ司令が通信に入って来た。
「うん」
そして猛は――新たなフォームチェンジを行う。
「フレイム!! サイクロン!!」
フレイムフォーム。
サイクロンフォーム。
その二つを混ぜ合わせる。
炎の竜巻が猛を包み込み、現れたのは胴体がノーマル、右が赤、左が緑のレヴァイザーだった。
右手に剣。
左手に銃を持っている。
『――まさかそんな手があったとはね。これは面白くなりそうだ!!』
王渡 志輝との再戦がはじまった。
先程パワーアップして手も足も出なかった筈なのに互角に――いや、互角以上に渡り合っている。
フレイムフォームの攻撃力とサイクロンフォームの身軽さが合わさり、攻撃も剣や銃から炎の竜巻が吹き荒れる。
空中に逃れても銃から炎の嵐が。
接近戦に持ち込んでも身軽さとパワーの手数で応戦する。
それでも王渡 志輝はトリッキーに剣や盾、そして先程と同じくマントや翼をも武器に変え、ダメージ覚悟の至近距離で胴体のドラゴンの飾りから炎のブレスを出した。
『はははは!! 楽しいなぁ!! この死ぬかも知れないと言う感覚!! とてもやめられない!!』
「狂ってるのは知ってたけど――こうして対面すると恐く感じる」
『それが普通なんだろう! ああ、僕は死ぬのかな!? それとも勝って生き延びるのか!? これこそが僕が望んだ人生だ!! アハハハハハハハハハハハハ!!』
狂気の自分の世界に入り込む王渡 志輝。
しかし――
『だが大人しく死ぬのを受け入れるのはちょっと理想と違うな? いや、理想通りにいかない理不尽さがあるから理想通りなのかな?』
などと考え込みはじめる。
猛はその寄行に思わず攻撃を躊躇ってしまった。
『とにかく今日のところは引き上げよう――』
「ま、まて!!」
そう言って王渡 志輝は地面にブレスを放ち、姿を消した。
「猛さん・・・・・・その、あの人は――」
そして入れ替わりに春歌が駆け寄ってくる。
他の敵はあらかた倒し終えたようだ。
「アレが王渡 志輝だよ――ある意味ではブレンよりも恐ろしい奴さ」
「はい」
王渡 志輝の狂気、闇を感じ取ったのか春歌は猛の言葉に同意しつつ二人は王渡 志輝が去った後を眺めた。
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