第五話「プリティアVSセイントフェアリー」
Side 天野 猛
「動ける春歌ちゃん?」
「猛さん・・・・・・すみません、今の私では舞先輩の足手纏いにしか」
「僕もそんな感じだよ」
猛と春歌は嵐山先生を庇うようにしながら揚羽 舞ことセイントフェアリーとプリティアとの戦いを眺めていた。
二人とも二連戦――洗脳された揚羽 舞や姫路 凜、そして担任教師の嵐山 蘭子先生との戦いで傷つき、疲弊。
さらに先程の謎の精神を浸食する洗脳的な攻撃で上手く体を動かせない状態だった。
春歌も猛もお互いのコンディションをなんとなく理解していたので特に言う事はなかった。
「今は舞先輩を信じましょう」
「うん」
春歌の言う通り――悔しいが揚羽 舞を信じるしかなかった。
☆
Side 揚羽 舞
戦いはまさかの空中戦。
「あーもううっとおしい!!」
揚羽 舞とプリティアとの接近戦になっていた。
舞は――プリティアに何もさせないために接近戦に持ち込んで相手にバリアを張らせ続ける。
ただそれだけの単純明快な作戦だった。
と言うか周辺の被害を考えればそれしか選択肢はなかった。
「なんなのよ!? こんな野蛮な戦い!? ありえないわ!!」
プリティアも最初は余裕だったが段々と追い詰められて焦っているのか苦悶の声を出す。
舞は構わずに攻撃の手を緩めなさい。
だんだんとプリティアが張ったバリアはヒビが入っていき――
「バリアが!?」
プリティアは驚愕の表情に染まったが構わず舞は思いっきり顔面へ一発殴る。
相手が砲弾のように吹き飛ぶような一撃だった。
「よ、よくも殴ったわね!? 私の顔を!?」
「あんだけ散々悪事働いておいてよく言うわ」
プリティアの言葉に舞はハァと溜息をついて返した。
実際建物の被害だけで済んでるのが奇跡のような状況だ。
死人が出てもおかしくはなかった。
にも関わらずプリティアの態度はまるで子供だ。
普通の人間なら怒って当然であり、被害者である舞の仕打ちや言葉は十分に優しいと言える。
「調子に乗らないで!!」
そう言って炎の弾を手から産み出し、デタラメに乱射する。
舞は回避行動に移るとそれに気をよくしたのか氷の嵐やら電撃をデタラメに放つ。
「そらそら!? さっきまでの威勢はどうしたの!?」
時に回避し、時に舞は被弾する。
回避しようと思えば全弾回避できたが建造物などへの被害もあるし、猛や春歌――その後ろにいる嵐山先生への注意を逸らす目的もあったので。あえて押されているフリをした。
とても中学生とは思えない戦い方だ。
(やはり猛のダメージが痛むわね――)
舞は痛む体を堪えながら戦う。
天野 猛のレヴァイザー、バニシングフォームの、ごく僅かな時間とはいえ――その一撃をもらったダメージがまだ残っている状態での戦いは辛い物があった。
洗脳されていたとはいえ、殺そうとしたのだから文句は言えない。
デザイアメダル絡みの昔のイヤな思い出が蘇るが戦いに集中する。(*ヒーローロードGより前のヒーローロード第四話「フェアリーサーガ」参照)
「はは、いただき!!」
紫色のコウモリが無数に現れて飛んでいき、舞に直撃して爆発する。
「舞さん!?」
「舞先輩!?」
猛と春歌が悲鳴をあげる。
煙が張れると舞が空中から落ちてくる。
そこへさらにプリティアは追い打ちをかけようとどこからともなく剣を取り出し、空中を飛んで斬りかかろうとする――
「なっ!?」
呆気なくプリティアの剣は舞の蹴りで弾かれた。
続いてもう一発、プリティアの腹に舞の拳が突き刺さり、またしても砲弾のように飛んでいく。
アスファルトの地面を抉りながら止まった。
「クソ――クソ!? なんなのよ!? 一体なんなのよ!?」
などとプリティアは悪態をつく。
言動はアレだが直実にダメージを与えている。
「アンタには色々と聞かせてもらうわよ」
と、舞はプリティアに静かに歩み寄る。
「まだ負けたわけじゃないわ!!」
プリティアはまだやる気満々だ。
だが呼吸も荒く、服もボロボロで彼方此方から血を流している。
(早く勝負を決めないとまずいわね・・・・・・)
だからと言って舞も余裕と言うわけでもない。
先程語った通り、猛とのダメージにプリティアの攻撃の傷の蓄積がある。
どちらかと言うと舞が不利だ。
『その辺にしておけ――』
「あんたは!?」
「新手――!?」
『Drジャスティスとでも名乗っておこうか』
舞にとってそれは嘗て戦ったブレンを思わせる容姿だった。
銀色のフルフェイスの頭部。
黄色の双眼。
そして漆黒のローブだ。
☆
Side 大道寺 リュウガ 司令
「Drジャスティスだと!? まさか――生きていたのか!?」
アーカディアの司令部。
そこで大道寺 リュウガは驚愕していた。
司令室にいるメンバーもタダゴトではないと思った様子だ。
女性オペレーターが代表して尋ねる。
「ご存じなんですか?」
「ああ――プリティアと名乗る少女のことはよく知らんが、今回の一件――奴が手を引いていたのなら納得だ――」
「何者なんですか、そのDrジャスティスと名乗る人物は――」
「詳しいことは後で話す――それよりも助けに向かわなければ!! 例え万全な状態でもあの三人では無理だ!!」
「あ、司令!!」
そう言って大道寺 リュウガは司令部を後にする。
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