第四話「事件の黒幕」

 Side 天野 猛


 次のポイントに向かう猛と春歌。


 徒歩ではあるが身に纏っているのは外宇宙の侵略者とやり合えるパワードスーツ。

 ヘタな車両よりも小回りは利くし、スピードは出せる。


「大丈夫春歌ちゃん?」


「そちらこそ舞さんにあれだけやられて――しかもバニシングフォームまで使って・・・・・・猛さんの方が心配です」


「そう言う春歌ちゃんも姫路さんにかなりやられてたよね」


「お互い様ですね――」


 などとやり取りしつつ――アーカディア本部からのナビゲートもあり、あっと言う間に次のポイントに辿り着けた。


「嵐山先生――」

 

 赤いバイクのヒーロー。


 自分達の学校の担任だった。

 

 黒いライダースーツをベースに頭はフルフェイス仕様のバイクのヘルメット。

 

 胴体を防護ガラスとライトが付いたレース用バイクの先頭部分で胸部アーマーとして身に纏う。


 背中に一対のマフラー管。


 両肩はバイクのグリップ


 左手首には変身ブレスレットを付けた赤いバイクを模した個性的なデザインだ。


 普段は不良教師気味だがブレンとの戦いでは教師としての気持ちに葛藤しながらも自分達のために命を張って戦ってくれた。


 それが敵として立ち塞がっている。


『ぐあああああああああ!! 来るな!! 来るな!! 今の私じゃ!! ああああああああああああ!!』


「凄い――洗脳に抗ってる?」


「先生――」


 体を捩り、必死に洗脳に抗う担任教師。

 その姿はとても痛々しいが、とても尊敬できるものを感じた。

 

 二人は戦う事を決意する。


――さあ、戦いなさい。私のお人形たち。


 何処から少女の声が聞こえた。

 瞬間に嵐山先生から黒いオーラ―が吹き出し、猛達に襲い掛かる。


「今の声は!?」


「今はそれよりも嵐山先生をどうにかしないと――」


 春歌の言う通りだが問題は嵐山先生だ。

 背中のマフラーから排気音。

 バイクの音を出しながらの高速移動しながらの攻撃を続ける。


 瞬時に猛は防御力重視のアクアフォームになり、三つ又の槍、トライデントを持って防御した。

 春歌も猛と背中合わせになる感じで防御する。


「ドンドン――攻撃が加速していってませんか!?」


「うん――たぶんそう言う風に命令されてるんだと思う――このままじゃ先生の体が保たない――」


 二人の体中から火花が散ると同時に痛みが走る。

 これが生身の体だったらとっくの昔にズタボロにされていただろう。

 

『ああああああああああああああ!!』


 そして高速移動攻撃が止まり――一旦跳躍しての跳び蹴り――アクセラレートクラッシュが放たれる。


 赤い閃光と化した一撃は二人に向かい――


「今だ!」


「はい!」


 そして猛はアクアフォームの必殺技、雷光を纏ったトライデントの一撃、トライでントクラッシュ。

 

 春歌はサクラブレードを取り出し、桜色の粒子を全開にした一撃を放つ。


 教師の一撃と二人の必殺技が激突した。



 何かしらの力のブーストが合ったのだろう。

 

 それに猛と春歌は揚羽 舞と姫路 凜との戦闘で傷ついている。

 

 どうにか相打ちになった形だ。


 嵐山先生はその場に倒れ伏していた。


「あははは、楽しい!! でも、今のところは世界を救った勇者には見えないわね」


 そう言って出てきたのは黒い高そうなドレスを身に纏った美少女だ。

 薄い紫色の髪の毛。

 赤い後頭部のリボン。

 小悪魔的な顔立ち。

 足下も赤い靴を履いている。


 そして頭には二本の角。

 背中には黒い翼に尻尾がついていた。


 ハイクオリティなコスプレ美少女に見えるが宇宙人まだ現れた世の中だ。


「私はプリティアよ」


「ぷ、プリティア?」


「事件の黒幕かな?」


「レヴァイザーの人、正解だよ。いや~なんかの役に立つかな~と思ってヒーロー達を手駒にしようと考えたんだけどね――」


「一体なんのためにこんな酷いことを!?」

 

 と、春歌は訴えるが――

 

「言ったでしょ? なんかの役に立つかなと思って」


「え?」


 と言う答えだった。


「ほら、ソシャゲとかで欲しい物を課金してでも集めるように私のコレクションにしようと思ったの」


 思わず春歌は「そんな理由で!?」と叫ぶ。


「あら? じゃあ世界征服のためとかそう言う理由だったら納得したの? 今時世界征服目論む悪党なんて流行らないわよ」


「そう言う話じゃありません!! なんなんですかアナタは!?」


 春歌のもっともな言葉を聞きながらも猛はダメだと思った。


 何がダメかと言うと致命的に倫理観の違いを感じたからだ。


「まあ正義の味方にあれこれ語っても面倒よね。んじゃあアナタ達も支配しちゃおうかしら?」


 そう言ってプリティアは手をかざす。

同時に漆黒の霧が二人に向かって噴出される。


「ダメ――体が――思考が――逃げて――ください、猛さん――」


「ごめん、戦いのダメージで体が――」


 危機的状況だった。

 

 体が思うように動かず、思考が塗りつぶされていくような――とにかく何も考えられなくなっていく。


 このまま洗脳状態にされてしまうのだろうか――


 不安に思ったその時だった――


「誰!?」


 誰かがプリティアに誰かが攻撃した。

プリティナはバリアのような物を張って攻撃を防ぐ。


「あれは……」


猛には見覚えがあった。


攻撃の正体は赤いリボンをブーメランのように誰かが投げつけたのだ。

プリティアのバリアに弾かれた後、リボンは持ち主へと戻っていく。

 

「体が痛むけど――まあなんとかなるわね」

 

 リボンの持ち主は――


「「舞先輩!?」」


 揚羽 舞。

 

 セイントフェアリー。


 さきほど天野 猛、レヴァイザーに倒されたばかりの少女だった。


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