第三話「ヒーロー部の部長」

 Side 城咲 春歌


(まさか姫路部長を敵に回すとこんなに強かったなんて――)

 

 何となく洗脳状態にあるのは分かっていたので最初はどうしようか悩んでいた春歌であったが段々とそうも言ってられなくなった。


 対するは赤いボブカットの勝ち気な少女、天照学園の理事会の娘の一人、姫路 凜。


 ヒーロー部の部長である。


 顔部分が露出した(額や耳元に飾りはついているが――)、SF的な要素が強いファンタジーのミニスカ美少女剣士風(+マント)な衣装を着ている。


 これでも一種のパワードスーツで入手元は不明だが外宇宙の勢力とやり合えるぐらいには強力なスーツである。


(武器は剣しかないけど――強い!)


 拳銃型武器ハートブラスターを使う間もなく、サクラブレードで応戦している。


(こうして戦うと多芸ですね部長!)


 時折斬撃をカマイタチのように飛ばして来たり、マントを盾代わりにして攻撃を防いだり、アスファルトの地面を剣で砕いたり――


(距離を空け――嘘でしょ!?)


 かと思えば剣先を向けてビームを拡散発射したり――


「巨大化も出来るんですか!?」


 剣がエネルギーの刀身を纏って二十m近くに巨大化したりとやりたい放題だ。

 それを躊躇いなく春歌に振り下ろし、辺りに煙が充満する。


「春歌ちゃん!?」 

 

 倒した揚羽 舞を介抱していた猛は思わず叫び声をあげた。


 春歌は――


「隙ありです!!」

 

「ッ!?」


 凜の顔面に思いっきりピンク色のエネルギーを纏った拳、レヴァイザーパンチを打ち込んでいた。


「確かに破壊力はありましたがスピードはありませんでしたね・・・・・・」

 

 と言って崩れ落ちた姫路 凜 部長に目をやる春歌。

 

 内心では顔面に思いっきり拳を入れて後で何を言われるかどうか不安だったが、同時にこちらも殺されかけたし、いくらでも言い訳できるなどと思っていた。


 修羅場をくぐったせいか以前よりも逞しくなっている。


「春歌ちゃん大丈夫!? カッコ良く決めたけど――」


「だ、大丈夫です。だから今はヒーロー談義は勘弁してください」


 天野 猛はヒーロー談義を始めると止まらなくなる変なクセがある。 

 一時期収まっていた時もあったが最近は復活しつつあった。


『二人とも無事か?』


 と、二人の無線に司令である大道寺 リュウガの無線が入る。

 猛は「なんとか――」と言い、春歌も「どうにか生きてます」と返した。


『状況はかなり最悪だ。どうやら何者かの手によって我々の仲間が洗脳されているらしい』


「こんな状況が彼方此方で起きてるってことですか!?」


 と猛が尋ねた。


『そうだ。洗脳されていない者が対処に向かっているがどうなるか分からん。その二人は他のスタッフに任せて他の場所に急行してくれ。一番近くのポイントに指示する。くれぐれも無理はするなよ』


 との事だった。


「二人の事が心配ですけど――他の人達もこんな風になってるんですね」


 恐ろしい話だ。

 どうにかして止めなければ周囲に被害が拡大してしまう。


「生きましょう猛さん!!」


「うん、春歌ちゃん!!」


 そう言って二人は一番近くのポイントに急行するのであった。

 

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