第二話「まさかの強敵」

 Side 天野 猛


 それは唐突だった。


「舞先輩!? どうして!!」


 同じヒーロー部の部員。


 同じアーカディアの仲間。


 同じ学校の先輩。


 揚羽 舞ことセイントフェアリーが正真正銘の"敵"として立ち塞がることになるとは――



 =話は少し遡り――学校にて=


 猛達はまだまだ中学生である。


 普段はこうして学生として天照学園の中等部の学生として学園に通う身である。


「最近皆と会ってませんね」


 と、桜レヴァイザーこと城咲 春歌が言う。


「しょうがないよ。これでも人手不足だからね――」


 なにしろデザイアメダルなどの超常犯罪に対抗する組織が致命的に少ない。

 

 猛達が所属しているアーカディア以外だと アウティエルこと宮園 恵理が主導となって活動しているWINや日本政府で最近出来た秘密機関ぐらいだ。


 今の猛と春歌のようにペアで活動させ、時間帯によってシフトで出動させているような状況だ。


 他にも猛達も知らない民間からの協力者も大勢いるそうだがそれでも今の状況らしい。


「なるべく早く手を打ちたいとは聞いてますけど、寂しいですね」


「うん――」


 春歌の言いたい事ももっともだ。

 嵐の前の静けさのようにも感じる。


「と、噂すればなんとやらだね」

 

 アーカディア本部からのコールだ。

 

 猛と春歌は有名人でアーカディアは天照学園の組織だ。

 ひとたびコールが入れば学校の授業を放棄して本部、あるいは現場に参戦しなければならない。


 

 最初は耳を疑った。


 場所は天照学園の昼時に差し掛かろうと言う時間帯の市街地。


 揚羽 舞、セイントフェアリーが敵として襲い掛かってきた。


「うううう!! うああああああああああああああああ!!」


 苦しみ、悶えながらも揚羽 舞はぎこちなく天野 猛に攻撃を繰り出す。

 猛は猛でどうすれば良いのか悩む。


(どうしてこんなことに――いや、それよりもどうにかしないと!!)


 セイントフェアリー。

 別名、青い妖精。

 

 青を基調としたカラーリング。

 羽根飾りと昆虫の触角が付いたヘルム。


 胴体はレオタードの上から羽のような肩のプロテクター、大きなリボンが目立つセーラー服のような衣装。そして腹部にこれまた大きなリボンをベルトのように巻きつけ腰に飾り付け、青と白のスカートを身につけている。


 両腕は純白のグローブ、両足は白いブーツ。左腕には変身アイテムの銀色のブレスレットを身につけている。

  

(ッ!! 様子がおかしいけど強い!!)


 長い青い髪の毛に赤いヘアバンドと赤いリボンで束ねた長いボリューム感があるお下げ。

 中学生離れしたスタイルの持ち主。

 クールそうな雰囲気の美女。


 だが実態はヒーロー活動歴が長い変身ヒロイン。

 猛の先輩で同じヒーロー部の部員であり、アーカディアのメンバーであり、ブラックスカルやブレンの戦いを一緒に戦い抜いた仲間だ。


 それが敵として今立ち塞がっている。


(春歌ちゃんは姫路さんの方で手一杯だ!! ともかく一人でなんとかしないと!!) 


 セイントフェアリーの実力はよく知っている。

 性能もそうだが装着者の揚羽 舞の実力も高い。


 実家が武術の道場とは言え、本当に新体操部の部員かと疑いたくなる。


「ッ!!」


 セイントフェアリーは胸のリボンを取り外し――剣に変形させて襲い掛かる。

 レヴァイザーも剣を取り出し、それを受け止める。

 

 その後、距離を離すと今度は剣をリボンに変え、リボンが変幻自在の軌道を描いて襲い来るも猛はそれを剣で払う。


 続けざまに今度は空中に飛び上がり――セイントフェアリーはレヴァイザーと違い空中を飛べる。春歌の桜レヴァイザーもそうだ。

 

 リボンによる中距離からの攻撃、近距離からの近接戦闘。

 さらにブーメランなどに変えたり、炎や竜巻、電撃を出したりする。

 セイントフェアリーの制作者の愛が垣間見える程に多様な攻撃の嵐。

 

 本気で敵に回すとここまで手強いのかと猛は防戦一方になる。


(氷で足が!!)


 セイントフェアリーが出した氷で足が固められる。

 

(足だけじゃない――体全体が凍り付いていく!!)


 セイントフェアリーは炎や氷を出すだけでなく、他の武装を混ぜ合わせる事も出来る。

 以前の戦いでは竜巻に雷を組み合わせてサンダーストームとか放ったりしたらしい。


 今回はさしずめアイスストームと言ったところか。


(寒い――意識が――)


『猛君!! しっかりして!!』


 オペレーターの女性の声が聞こえるが急激な体温の低下とこれまでの戦いのダメージで意識が朦朧とする。

 

 そしてセイントフェアリーがトドメの一撃であり、拳の必殺技――フェアリングスマッシュを――


(ここだ!!)


 纏わり付いた氷をはじき飛ばし、胴体に重い一発をカウンター気味に撃ち込む。

 

 猛がやったのはバニシングフォームへのフォームチェンジ。

 使用は控えられているフォームの一つだ。


 とにかく強力なフォームで通常形態の何十倍ものパワーとスピードを得ることが出来るのだが体への負担がとても大きく、使用は禁じられているフォームだ。


 それをごく数秒だけ使用したのである。

 

 揚羽 舞――セイントフェアリーが崩れ落ちる。

 

 猛も同じだ。


(どうにかなったけど春歌ちゃんの方にはどうにか駆けつけられるかな――)


 と思いつつ、もう一つの戦いに目を向ける。 

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