第38話 和やかな時間。

 さて、お茶の話しはもういいから本題だな。


「父上」

「なんだ?」

「御報告でしたよね?」

「……そうだったな。で?」

「恙無く」

「ふぅ、そうか……」


 ひ、一言かよ!兄。

 でも、これで本当に一区切りかな?


「エルク、ルークご苦労だった」

「いえ、ルーが全部一人で仕事をしましたよ。私等お飾りでしたよ。ハハハ」


 付いて行く意味もなかったとしょんぼりし始めて…何気にウザイ!

 役には立ってくれましたよ?兄!


「兄上そんなことは…」

「有るだろ?ルー」

「ま、まぁ、エルク。お前にはいつも政務の方で、色々面倒な事を捌いて貰ってるのだから、何も気にする事はない。それにお前が居れば、ルークが無茶をしないだろ」


 父上が機嫌を治せと兄を励ますが父よ!俺の立場は?

 でもエルク兄を励ますなんて、珍しい事もあるもんだ。

 …明日は雨かな。


「ま、そうですね」

「兄上、餅は餅屋ですよ?」

「お前がそれを言うのか…」

「フフフ。それにしてもなにやらお前達は、楽しそうな話をしていた様だが?」

「ええ、父上。ルーがこの一週間でやらかした話が楽しくて?」

「兄上!やらかすとは!なんですか?私は真面目に、資金を作って来たのに。そんな方には、これはさしあげませんよ?」


 コトンと二本のタイピンをテーブルに置いた。


「ルー?これは、なんだかすごく嫌な予感しかしないが?」

「それにこれは……真珠か?」

「まぁ、真珠には違いないですかね?これは」

「なら、なんだ?」


 虹色に光ってるな?と兄が言う。

 目敏いなぁ~流石兄だな。


「それはイールがお土産だと言って、何処からか持って来たのですが。鑑定したら便利な物だったので、加工してその形にしました。私とお二人で揃いです」

「ルーだからこれはなんだ?」

「何だが聞きたくないぞ!私は」

「まあ、そう言わず!父上。それに兄上も、それは【オーロラ真珠】といわれる物らしいですよ?巷では、別名があるそうで【人魚の涙】と言う物らしいです。付与がしやすくて、癒し系効果が最初からありまして。それに追加効果で、毒除けと痺れ避けを付与にしてあります。公の場に出る時は、これをお付け下さい」


「「ルーク」ルー!」


 な、何ですか?お二人とも大きな声を出されて!頭に響きますよ!


「ルー!これは、お前国宝じゃないか!」

「そんなもん易々と付けられるか!」

「ん~でも、お二人とも死にたくは無いでしょ?それに癒し効果は良いのでは?」

「ま、まぁそうなのだが……。だが、これはむぅ……」

「まっ、タイピンですから」

「だがなぁ……これは目立つ」

「なら、残念ですが。これは、無かった事にしますね?」


 残念だと言って仕舞おうとしたら…待てと言われた。なんかこの光景は見たことあるなぁ。


「なんですか?お二人とも要らないのですよね?私はほら、こうして付けますが。兄上どうですか?似合いますか?」

「あ、あぁ、お前は顔立ちが整っているからな、そう言う物が良く似合うな。ですよね父上?」

「あぁ、そうだな。良く似合ってるよ、お前は昔からそうやって我々に、なにかしら物を贈ってくれるなぁ……。それなのに……すまないルーク。私は駄目な父だ」


 な、なんで泣く?

 えっえっ!俺なんかしたか?


「父上、ルーが驚いてますよ?」

「お、おお、すまんなルーク。なら、これは有り難く貰うとするよ。そうか、癒しに毒とマヒか……それは良いな」

「ええ、そうですね?ルー私も喜んで貰うとしよう。それにしても返せる物が無いな?お前には」

「な、なに言ってますか?こうして三人で話せて、旨い物や酒が飲めれば、別に何も要りませんよ?子供の頃から私に怒りながらも、味方をしていただいてるのですからね?それに随分驚かせて仕舞って、申し訳無くは思ってるのですが…中々上手く行かなくて。揉め事が……」

「クククそうだな。良く驚かせられる。それは今もだがな?なら、これは、迷惑料かなルーク」

「ええ、そう思って下さいよ」 

「「「フフフ」」」


 と、三人で和やかに笑い合った。

 こう言う毎日が送れればいいと思うルークだった。


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