第37話 報告する前に。

 王都の屋敷を破壊して領地に戻って来たルーク達は……。


「兄上、お疲れさまでした」

「ルー、それは俺がお前に掛ける言葉だな。ご苦労だった、ルーク。お前が居てくれると時間も金も掛からないから、私達は楽が出来るが…遺憾とも……心苦しいのだがなぁ」


 ルークよ少しは自重してくれと謂われてる気がするのは、どうやら気のせいでは無さそうだな…。

 な、なんかすみません。


「別に……気にしないで下さいよ。兄上、俺は好きにさせて貰ってますからね。それより父上に御報告ですかね?」

「それが…あったか。カイズ、ゼルマンお前達もご苦労。今日は下がってゆっくりすると良いぞ」

「は!ですが私達は何もしてませんでしたから…特には。ですので、訓練に戻ります!」

「……まぁ、偶にはのんびりしてくれ」

「そうですか?」

「ああ、許す」

「でしたら少し、城下に出ても宜しいでしょうか?」

「どうした?ゼルマン」

「いえ、城下に家族が居りまして、その……」

「……まぁ、良いだろう。夕方には、戻れよ」

「はっ!ありがとうございます。エルク様」

「カイズは?」 

「私は…部屋でゆっくりしたいと…」

「そうか、成らば各々で時間を有意義にな?ここで解散だ」

「「はっ!失礼します」ルーク様、失礼を」

「お、おう。ご苦労」


 そして、兄上の影達は部屋を出ていく。

 残ったのは、俺の影達だが……。

 ……こいつらにも休みをやるかな?


「メンサス、トレバン。お前らも今日は休んでいいぞ。明日は訓練に戻ってもらうが」

「ルーク様、宜しいのですか?」

「本当に?」

「構わないぞ?また、明日から頑張ってくれれば」

「は!承知しました」

「では、ルーク様。本日はお言葉に甘えさせて頂きます」

「ああ、ゆっくりな?」

「「は!」」


 兄上の影同様、俺の影二人も部屋を出ていった。

 メンサスたちと入れ替わりで、セバスとワゴンを押したサリーがリビングに入ってくる。


「ルーク様、お戻りと聞きましたのでお茶をお持ちしましたが、如何いたしますか?エルク様、ルーク様」


 俺たちの顔を窺い茶を出すかと聞いてくるセバスだ。


「お茶か…兄上どうしますか?」

「そうだな、折角セバスが用意したお茶だ。茶の一杯でも飲んでから、父上の部屋に出向いても遅くはないか」

「そうですか。なら、セバ頼むよ」

「畏まりました。ではご用意致します」


 セバスの入れたお茶を飲みながら、兄と久々にゆっくりと話す。

 だが、父の執務室に行くのを忘れる程に話しが弾んでしまった。


「で、ですね?兄上」

「なんだい?未だあるのかい」

「ええ、それは飛びきりの情報ですよ?」

「なんだい勿体ぶって?」

「それがですね……」 

「お前達!」

「えっ…?あっ!これは父上」

「どうされましたか?突然現れて」

「どうされた? ……じゃないだろう?」

「……あっ!兄上、父上に御報告するのでした」

「そうだったな?少しのつもりが、大分時間が経っていた様だ」

「すみません。父上、伺おうとは思っていたのですが、ルーの話が面白くて」

「兄上面白いとは、失礼では?私は…」

「お前達…仲が良いのは分かったから、報告だけしてくれ。全くお前達は…」


 アハハ、確かに夢中で話してたか…。

 まっ、でも報告だから…無駄話はしてない筈だ…うん。


「そうでしたね、今ここで報告しても?セバスにお茶を入れさせますが」

「……まぁ、良いだろう。セバスの入れた茶も旨いからな」

「フフフありがとうございます。旦那様、今日のお茶は、ルーク様の菜園から採取したお茶でございます。緑茶と、言うものだそうです」


 セバスがどうぞと言い木で作った茶托に、取っ手のない茶碗が乗った茶と、茶請けの菓子を一緒に父上の前に出した。


「ほう……これはまた見事な緑だ。それにこの菓子は?」

「ええ、少し苦味が強いのですが旨いですよ。それと、茶請けの菓子ですね。茶の苦味と甘いものを一緒に食すと、愛称が良いのです。父上どうぞ」

「ほ、ほぅ……そうか?なら……………ん!苦い茶だな。それでこれを食べるのか?……むぅ………甘味がいいな?そしてまた茶を飲むのか?…なんともこれは!」

「填まりますよね、父上……。私もルーに進められて、食しましたが…なんとも」

「フフフ。でしょ、お二人とも?」

「ルーク、これは何処で買うのだ?」

「買う…ですか?」


 俺が困った顔をするとセバスがフォローしてくれた………助かるよ。


「旦那様、こちらはルーク様の手作りです」

「はぁ?…またかルー」

「ハハハ。兄上またですよ」

「まったく、ルークには、本当に驚かせられるな?」


 そんなつもりは、全くないぞ。

 俺は好きなようにしてるだけだしな?

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