閑話 見放された母と娘。
メイドのサリーが、この部屋から逃げて行ってから、誰もローズの部屋を訪れる者は居なくなった。
お母様も忙しいのかしら…?
あれから来て頂けないわね?
なんでかしら、美味しいお菓子を持って来てくれると、約束事したのに。
「何故誰も来ないの?私の世話をする使用人は、確かルーお兄様付きのあのサリーだったかしら?あのメイドが、来る筈よね?何故来ないのかしら。お母様に言いつけて、クビにして貰わないとね?フフフ」
そんな呑気な事を考えて呟やいた。
ローズは、メイドの居ない不便な時間を過ごしていると、突然ローズの部屋に兵士が乱入してきた。
「キャー!だ、誰!お前達!私を誰だと…」
な、なに?なんなのですの?
何が起こってるの?これは…なに?
じたばた暴れるが、兵士の力には敵わず押さえつけられた。
「貴方達!私に触らないで、無礼者!」
押さえられてもローズは、騒ぎ立てる。
「離しなさい!私を誰だと、思ってるのよ!」
だが…誰も口を利く事もなく、兵士はローズの腕を後ろ手にされ歩かさられる。
暫く背中を押されながら、裸足で外に出ると荷馬車に檻が乗った場所まで連れてこられた。
ロースが目の前の檻に目を遣ると、その中には見知った人物が素手に入られ、蹲り項垂れていた。
兵士に背中を突き飛ばされ、檻の中によろけながら入ると、お母様が私に気が付いたのか?何も言わずに私を睨み付けてくる。
「お、お母様?こ、これは?なんなのですか。何でこんな無体をされないと!」
「煩い!」
「は?なんですか。お母様、お父様に早く出してくださいと、お願いしてくださいませ?」
「煩い!聞こえないの?煩いと言ったよの?あんたの所為なのよ?こんな仕打ちを受けるのは!全てあんたのせいよ!」
「は?何で、お母様?」
「あんたに、母親なんて言われても寒気がするだけ!口も聞きたく無いわ!」
「………お母様?なぜ……」
無理やり押し込めれた、鉄格子の外をみるとエルクお兄様とお父様が見えたわ。
「お父様!エルクお兄様!ここから出してくださいませ!私は、こんな無体をされる覚えは有りませんわ!ここから出して!」
私が父に向かって叫ぶと、隣で項垂れていたお母様が騒ぎ出した。
「あ、貴方!私をこの愚か者と一緒にするのは、やめてくださいな?私をここから出して下さい。お願いよ!ねぇ、ガウル出して?お願い。も、もう余計な事はしないからねっ!」
「お母様?余計な事ってなに?」
「煩いわね!私に話し掛けないで頂戴!私は、お前に言ったわよね?サリーはルークのメイドだと!それをお前は………!忌々しい!お前の所為で罪人扱いよ!何てことしたのよあんたは!」
サリー?あぁ、あのメイドね?でも何でかしら?
それは、少し苛立っていたから叩いたけれど……?
それだけよ?どうして罪人なのかしら?
すると、お父様が御者に号令を掛けて荷馬車が動き出した。
「ガタン」と音がすると、私が入れられた檻が動き出す。
屋敷から裏庭を抜けて荷馬車が動いた…。
……何処に連れて行かれるの?
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