閑話 ローズマリアの正体は?

「貴女?サリーと言ったかしら?」

「は、はい。お嬢様………」

「今日はもう良いわ!明日また、夜に来て頂戴」

「畏まりました。……失礼致します」


 そして、次の日にローズの本性が現れ出るのだった。


「失礼致します。お嬢…お食事をお持ち致しました」

「あぁ、やっとの来たのね?全くお前…愚図ねぇ~。フン!なんでお前みたいなのが、ルーお兄様のメイドなの?」

「も、申し訳………。お、お食事を御用意させて頂きます」


 な、なに?その怯えた態度は!

 私が何かしてるみたいじゃないの!腹が立つわね!

 なんなの!使用人の癖に、ルーお兄様のメイドと言うだけでも腹立たしいのに!

 この怯え方はなんなのよ、余計に腹が立つわ!


「貴女普段は、ルーお兄様の側付きなんでしょ?」

「は、はい。そうですが……何かございましたか?」


 ございましたかでは、なくて!


「ルーお兄様は、普段は何してるの?」


 良い機械だもね?普段のルー兄様を知りたいわ。


「ええっと私は、メイドですので……。何をと申されても、ご主人様の普段の行動は、普通ですし………。ですので、普通にお忙しくお仕事をなさって居ります。としか………」


 何だかイラッとしたわね?

 なに?そのルー兄様は忙しく働いてるわよ?

 みたいな言い方は?まるで私が遊んで…。

 何だか凄く、このメイド気に入らないわ!

 ルーお兄様の側に居る女なんて、誰でも許さないわ!例えメイドだって許さない!


「あら?なんだが皮肉に聞こえるわね?それって私が遊んでる様に、聞こえるわ。お前、何様なのかしら?」

「は?い、いえ私は、そんなつもりは御座いません」

「は?なにを言い返してるのかしら?この口が何を言うのかしらね?」


 気に入らないわ!


 メイドの頬に爪を立ててつね上げる。


「ヒィ!い、いいーーいはい(痛い)でーー」

「はぁ?何を言ってるの?聞こえないわよ!」


 メイド頬をつねる指に力を入れて、爪を立てる頬から血が溢れ出る。

 それをローズは、全く気にする事もなくサリーの頬を深く爪を食い込ませて傷付けた。

 そして、頬から手を離すと今度は、側に有った本で、血が溢れ流れ出ている頬に目掛けて本で頬を叩く。


「バン、バン」と何回か頬を目掛けて叩くと、今度はテーブルに乗ったティーカップに目が止まり、カップに残っていたお茶を頭から掛ける。


 ローズからの暴力を受けながらサリーは思う。


(痛い助けて、助けて、母様助けてと……) 

   

 何故自分はこんな目に合うのか?痛いと訴えて居るにも関わらず、今度は熱いお茶を頭から被った。

 痛いし熱い!なぜ?こんな酷い仕打ちを、この人から受けないと成らないのか!

 私は、何もしていないのに。

 使用人の私は、抵抗出来ないのに!

 ルーク様、母様助けて!


「ひぁ!あ熱い!熱い!だ、誰かた、助け!助けてぇーー!」


 そう叫んでサリーは、ローズの前に頭を庇いながら蹲ってしまう。頬からはまだ血が暴れ出ている。

 ローズは、蹲ったサリーを見下ろしながら笑う。

 フフフ、助けてですって。

 誰も助けにこないわよ?ここには誰もね……。


「誰もあんたの事なんか、助ける訳ないでしょ!ほら!もっと叫んで見なさいよ!ほら誰も!こないわよ!」


 サリーは両手で頭を庇うが、庇う手が火傷をしたのか?熱さで痛いし頬はもっと痛い。


「あらぁ~未だ熱かったのかしら?手が赤いわ?早く手当てなさいな。フフフ、でもお前が入れたお茶を、自分が被るのは?どんな気持ちかしら?フフフ」

「……………ルーク様……助けてぇー。痛い……痛い……母様助け……」

「なに!ルーお兄様を、呼んでるのよ!図々しいわね!」

「バン」


 と持ってる本を、サリーが痛いと頭を庇う手と一緒に頭の上から叩き落とした。


「…………ひぃ」


 フフフ。ひぃですって笑えるわぁ~!あぁ気持ち良いわね?

 所詮使用人ですもの、何をしても文句も言えないから、私の好き勝手出来て良いわねぇ~?


「そうだお前、マルレイを知らない?」


 頭からお茶を掛けられて、濡れて下を向いたままのサリーに、自分のお気に入りのメイドの名を口にして所在を訪ねるが……。

 サリーは、ルーク付きのメイドで一度もマルレイという名のメイドとは、会う機会もないので知らないのだが………。

 そんな事を、まるで把握していないこの愚か者のローズは知らない。


「………」

「なによ?知ってるのに話さないの?何故かしら?言いなさいよ!マルレイは何処に行ったか知ってるでしょ!ほら!」


 ローズはサリー頭を、また本でバシリと叩く!

 何度も叩く。

 サリー火傷をした手で頭を庇う。

 踞り頭を庇いながら、早くこの時間が過ぎてくれと願う。

 そして、ローズの気は未だ治まらないのだろうかと……。


「ッいた!」

「なによ?気持ち悪いメイドね!あ~もう良いわ!出ていって頂戴!」


 この言葉を聞かぬ内に、サリーはローズの部屋から走って逃げ出して行った。

 や、やっと……。

 は、早くここから逃げないと!


 逃げ出したメイドを見送ったローズ。


「ふん!全くお母様も、使えないメイドなんかを寄越して…。早くマルレイを連れて来なさいよ使えない!」


 と……母にまで悪態をつくのだった。





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