第51話 誕生日パーティー 背負い投げ!

 急ぎ足で人にぶつからないように、歩いて行ったセバスを見送り、早くマルスを連れてこいと後ろ姿に訴える。


 だが、チェスターがいきなり大声を出してなにを叫ぶ。


「ルーク!私は悲しい!」


 そう言いながら俺に抱きつく。


「チ、チェス兄さま。どうしました?重いですよ、ほら……皆様が驚いて居ります離れて下さい」

「ルークまで俺に冷たい!何故だ!俺はマクウェル家の長男だぞ!」

「な、なに訳のわからない事を言ってるのてすか!重いですよ離れて」


 抱き着かれながら周りを見ると、注目の的に成りそうでどうしたものかと悩む。

 ここで、こいつにワンパン喰らわして気絶させるか?だがこいつ重いんだよな!

 さて、困ったぞ!

 そこに問題児2号が割って入って来た。


「チェスターお兄様!私のルー兄様になぜ?抱き着いて、いらっしゃるのかしら?」

「ローズ、お前ま……おまえ………もか!おまえも……おれに冷たい!ルークお前は……そんな事言わないよな?な?ルーは俺の味方だーーー」


 チェスターが腕の位置を変えて、また抱きついた。こいつ呂律が回ってない?でもしっかりとホールドされてるのだが?

え…………っ?演技?


 一瞬先日の記憶が甦り体に力が入るが、今回は冷静に誰にも気づかれないように、自分に身体強化魔法を掛ける事ができた。

 だが、痛いのは変わらないのでチェスターの腕の中で、動きもがくが。

 まったく腕が動かないこの馬鹿力が!わざとやってるなこれ!


「ローズこの状況を、見たなら助けろ」

「は……はいルー兄様。チェスターお兄様、ルー兄様から離れて下さい!ルー兄様は私のです!」


 どさくさに紛れて何を言ってるのかな、この子は?仕方ない。何とかこのバカから離れないと。


「チェス兄さま!苦しいので離してく……私はチェス兄さまの、味方ですよ?離れて下さいよ」


 この~糞兄貴!!離しやがれ!

 客前で怒鳴れないので余計に腹が立つ!

 会場の片隅で騒がしくしていると、エルクがルークに近付いて来ていた。

 そして、エルク兄上が俺の後ろから声を掛てこられて少し焦った。


「ルーク結界と音を遮断しろ」

「はぁ?エル兄上なにを?」

「良いから早くしろ、それと認識阻害もだ。早くしろ!」

「わ、分かりました」


 狭い結界と遮音をして、認識阻害魔法を一気に掛けた。


「エル兄上終わりましたよ、頼みます。これ外して下さいよ」

「全く!チェスター兄上?何をしてらっしゃいますか!もうすぐ母上がここに来ますよ!しっかりしろよクソ兄貴!」


 どかりと、エルクがチェスターの脇腹に蹴りを入れる。すると「うっ!」と、チェスターが唸り。

 ルークに抱き着いて居た腕の力が、少し抜けたのが分かったので、ここぞとばかりに腕を取り体制を替えて、一本背負いで投げ飛ばす。

 投げ飛ばされたチェスターが、床に転がり脇腹を押さえて蹲った。(受けるぅ~笑)


「はぁ~、毎回、毎回鬱陶しい!チェスターお兄様、いい加減にして下さいよ。エルク兄上ありがとうございます。危うく、客前で失神する所でした」


 チェスターは転がされたショックで、床に転がったまま動かない。(笑)

 動けよ!そして起きろよ、更に俺に謝れ!酔っぱらい!


「全く仕方の無い兄だ!ルーク大丈夫だったみたいで良かったよ、あ、ほら、彼処からお出ましだ、結界諸々の魔法解けよ?」


 エルクの指を指す方を見ると、母が此方に向かってきていた。可笑しい?認識阻害掛けて居たのに何故この場所か分かるのかな?謎だ。


「あ、本当ですね?直ぐ解きます」


 ルークが魔法を解いた。


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