第12話 マルクス爺。

 マルクス医師の魔法でルークの傷が治って行く。

 そして、ベッドに寝かされたルークの意識が戻った。


「ル、ルーク目が覚めたか?」


 声が聞こえた方に顔を向けると、心配そうな顔をした兄が居た。


「ん……チェス兄さま?」


 声を掛けると、ウルウルと泪目になっているが………。

 こ、怖い、今は放っておこう。


「ルー坊っちゃん。気がつきましたかな?」

「あれ?マルクスじい、なんで居るのかな?」


ルークがキョトンとする。


「ルーク様は、チェスター様からご無体を受けて、今までお怪我をして……。気絶させられて、眠っていたのです!」


 セバスがハッキリと嫌味を口にして、元凶のチェスターを睨む。


「…………っ」


 ん?無体…………?


「ルーク坊ちゃん。何処も痛いところ無いかの?」

「え?無体、痛み?何だったか………」


 ルークはマルクス医師に、痛みはないかと聞かれて、自分の身体をパタパタ触る。


「大丈夫だ、どこも痛くない。マルクス爺のおかげだ、ありがとう。セバス、俺どのくらい寝てた?」

「そうですね?ほんの1刻程です」


上半身を、起こしながらセバスに訪ねる。


「そうか」


ほっとしていると、また上半身に抱き着いてくる人物が居た。


「る、るぅ~く。わ、私が、私が悪かったぁ~」


良い大人がガン泣きしている様は、何と言うか情けない。しかも、王国騎士副隊長様がだ。そして、ルークの周りに居た人物達が慌てる。


「チェスター様。またルーク様にな、何を!」


セバスが慌ててルークとチェスターを、引き離そうと腕を伸ばし掛ける。それに気がついたルークは手で、セバスを止める。小さく(大丈夫だよ)とセバスに合図する。


「チェス兄様、私は大丈夫です。だから泣かないで下さい。でもあれは、出来れば……もう勘弁してくださいね」


ニッコリと、笑顔で釘を挿す。


チェスターは苦笑いをする。


「す、すまぬルーク。今度から気を着ける」


「そう願います」


「ホホホッ、ルー坊っちゃん。もう大丈夫の様だの?儂は、薬室に戻るとするかの」

「あぁ、マルクス爺助かったよ。改めてありがとう。また茶でも飲みに薬室に伺うよ」

「ホホホッ、それは良い。ルー坊待ってるぞぃ。ではの、また何かあれば呼ぶようにの?」


ホホホッと部屋を退出して行く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る