風に吹かれる葉っぱ

hitori

第1話

 座敷童、会ってみたいなぁ。UFO見たことないや。私には寄り付かないんだね。つまんないの。だいたい視力が弱いから、眼鏡をかけてないと星が見えない。眼鏡は車の運転のときだけだし、空の未確認飛行物体を見たいなんて無理~~~。座敷童は楽しいところに来るんじゃない?うち、おもちゃないよ。部屋だって掃除苦手だし、お人形を飾るなんてこともないなぁ。


 今のバイトは夕方から。山越えしていくと近いから、狭いところもあるけど、利用してる。明るい時間はいいけど、帰りは11時ごろになるから、鹿とか出そうで怖い。まぁ、出くわしたことはないよ。反対に家の近くでは、ばったりと出くわしたことがある。鹿が動かないでいてくれたので、そっと通り過ぎることができた。


 帰り道に山越えするときは、車はほとんど通らない。風が吹くのか、よく落ち葉が舞っている。一本道なんだけど、途中、脇道に入るところがあって、そこを通り過ぎると、落ち葉が車の前をスーッと走り抜ける。一枚だけどね。それがライトにあたって目立つんだよ。毎日のように見るから、仲良しの友だちのような感覚で、「また会えた」って嬉しくなる。


 おかしい?だって葉っぱだよ。少しも不思議じゃない。雨の日も雪の日、晴れた夜空の日も木の葉が、ひらひらじゃないんだ、スーッと横切るんだよ。


 テレビでよくミステリー番組を見るのが好き。ゴーストホテルでお泊りウオッチングがあるんだけど、夜中になると、変な音がしたり、オーブがふわふわ泳ぎ始めたりする。座敷童は、音がしたり、物が動いたりはあるんだけど、せいぜい小さな影くらいが撮影されるだけ。いや、まともな映像が撮れたとしても刺激が強すぎて放送できないだろうから、こんなものかなって見てる。


 数か月が過ぎたころ、相変わらず見る葉っぱ。ふと思った。葉っぱ、いつも同じ場所で同じ時間、同じコース?他の場所では見たことない。家の近くの山のふもとの道、落ち葉あるけど、こんなじゃない。もしかしてここパワースポット?誰も知らないパワースポットなのかもしれない!とすると、これ発光体、オーブ!

 なんか怖いなぁ。なんで気がつかなかったんだろう。


 それから私は考えた。なぜわからなかったのか。見たものを自分の知っている知識で理解しようとしている。だから葉っぱにライトがあたって光って見えると思った。

 ああ、こんな調子だから、ミステリーとか不思議体験がないんだわ。みょうにたくさんの本を読んだりしているせいで、頭でっかちだもの。何かあると、感じるとかよりも考えちゃうんだわ。空を見て動く物があると、飛行機か人工衛星と判断して、じっと見るなんてことしない。


 うっ、もしかしたら宇宙人だっていっぱいいるのかなぁ。気がつかないだけかもしれないよ。「私が宇宙人です」なんて言うエイリアンはいない。もし見つけたとしても、人類の危機だとか言って、国が捕獲、発見者は情報漏洩防止なため、どこかに連れ去られる。

 ああ、やっぱり怖いことなんだ。ミステリーになんて遭遇しないほうが幸せ。

 話が飛躍しすぎ?宇宙からUFOに乗って生命体が来るわけないじゃん。宇宙の広さをなめたらいけません。生命体は必ず存在するけど、地球にまでくることはないのです。

 しかし、私たちは、自分が生きている次元、空間しか知らない。同じ地球で、どこかに出入口があって、そこから違う次元に抜けられるかもしれない。だからおかしな乗り物や生き物がちらほらと顔を出しているに違いないのです。


 そんなことより、問題は葉っぱのようなオーブ。家までついてこられても困るので、山越えはやめて、遠回りして帰ることにした。しかし、気づくのに何か月もかかる私は鈍感すぎです。

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