第5話 ケーキ作り



視点{カリム}



翌日

アリスを連れてゴミ捨て場にやってきた


「どうしてこんな所に来たの?」

「そうかアリスは知らないんだったな」

「?」


ゴミ置き場の裏に回り穴を見つける


「わぁー!」

「ここを抜けると・・・・」


俺が先に穴を通り、アリスは後に続いて穴を通り抜けた

そして5分ほど歩いて俺の秘密基地に到着した

入り口の反対側へいき鉱山の入り口にやってくると

俺は岩の上に手を置く


そして魔力を流し込む

岩の構造が頭の中に入ってくる、その中のアルミニウムを見つけ

鉱物内のアルミニウムだけを引っ張り出し、まず「泡だて器」を成形する


岩の中からスライムのようにアルミニウムが出てきて

みるみる泡だて器にアルミニウムが変形していく


アリスはそれを見てとても驚いていた

よし、完成


初めて泡だて器を作ってみたが

前世にあった泡だて器と同様な物を作りだすことができた


次にケーキを焼く型を作る

慎重に型のイメージをし岩に手を置く

するとさっきのスライムのようにアルミニウムが絞り出され

ケーキの型を作っていく


よし、いい感じだ


「??」


俺の隣でアリスは意味不明な顔をしていた


「カリムちゃん、馬車のコロコロなんて作って何に使うの?」


「車輪な、コロコロってお前・・・・ここに生地を入れて焼くんだ

もっといろんな調理器具が必要だから作るぞ」


「うん、わかった」


それからボール、ヘラ、ふるいなど基本な調理器具を作った


「よし、こんなものだろう

そろそろ夕方になるし戻ろう」


「うん!」


そして俺とアリスは教会へ戻った


「ねぇカリムちゃん、ケーキの事とかいろいろ聞かせて」

「別にかまわないが」




視点{アリス}




「やった」


これでケーキの事とかカリムちゃんの話が聞ける!


「まず基本のショートケーキが・・・・・・」


夕食の時も隣同士で座りケーキの話で盛り上がった

ケーキの話は他の人にも聞こえたかもしれないけど

真剣に聞く人なんていないと思う、聞いていたのは私くらい


そして深夜の0時、寝ているみんなを起こさないように私は調理場へ行くと

カリムちゃんは先に来てた




視点{カリム}





前は巡回している人がいたが人件費削減のためもういない

調理場で作った器具を広げていると


「ごめんね、待った?」


アリスが入ってきた


「いや今来たところだ、じゃあ早速始めるか」


「はーい」


さっそく調理を開始する

作るのはシンプルなスポンジケーキでワンホールだけ

それ以上使うと教会の人たちに食材が減っていることがバレる危険がある

薄力粉、卵、砂糖、バター、サラダ油、牛乳、生クリームなどを拝借する

この教会には窯がありそれでクッキーを焼いていた


窯を使って調理するのは初めてだが、これは何回も挑戦して

最適な焼く場所と温度、時間を見つけるしかない


「まず、薄力粉をふるいにかけるんだ」


「ふるい?」


「これだ、こんなふうにポンポンってしながら粉を下に落とすんだ」


「うんわかった、ポン、ポン」


アリスは、ぎこちない手付きで粉をふるいにかけて頑張ってる


「俺は卵白を泡立ててるから」


シャシャシャシャシャ


菓子作りなんて久しぶりだが意外と覚えているものだな

すぐに感覚を取り戻し作業を進める

そんな俺をアリスが興味深そうに見ていた


「珍しいか?」


「え!?う、うん」



さて、少しづつ砂糖を加えながら泡立てる


「私もやってみたい」


「お、やってみるか?」


俺の動きをみてアリスが真似て泡だて器を使ってみる

だが中々難しらしくうまく混ざらない


「あれ?」

「もっと力を抜いて、こんなふうに」


俺はアリスの手の上に手を添えて動きを誘導する


「あっ」

「ん?どうした?」

「・・・・な、なんでもない」

「教会の人の巡回はないから安心していいぞ」

「う、うん」


ぎこちないが少しずつ混ざってきた

よし角がピンと立ってきた


「そろそろ少しずつ卵黄を混ぜよう」

「わかった」


しゃ・・・しゃ・・・・しゃ


掻き混ぜる音だけが調理場に響く

小さい体だなぁ・・・アリスの隣に立ってみてそう思う


「カリムちゃんもういいかな」

「うーん、もうちょっとだな、変わろう」

「ありがとう、結構大変なんだね」


「そうだな、俺も初めてやった時は腕がパンパンになってたっけ

力の入れ方次第なんだよなぁ」


シャシャシャシャ


「よし薄力粉を入れよう」


俺は薄力粉を入れるとざっくり混ぜた

そこに、あらかじめ溶かしておいたバター、サラダ油、牛乳を入れ

混ぜて型に流し込んだ


アリスは几帳面にメモを取っていた

180℃で30分くらい焼くのがいいんだが

これはなんとなくで窯の中に入れるしかない

・・・・・・まず真ん中においてやってみるか


「アリス焦げないように窯の中を見ておいてくれないか?」

「わかったよ、カリムちゃんは何するの?」

「生クリームを泡立てる、そうするとクリームができあがるんだ」

「生クリームを泡立てるなんて初めて聞いたよ」

「そうだろうな、じゃあこっちは泡立てているからそっちは頼むな」

「はーい」


しばらくするとだんだん香ばしい香りがしてきた

クリームの方も出来上がって来た


「カリムちゃん、そろそろいいかも」

「オッケー取り出してみるか」


スポンジを取り出し半分に切ってみる


「お、いい感じだ大体25分か?メモに真ん中25分って書いといてくれ」

「うん、この後どうするの?」

「後はナッペして完成だ」

「なっぺ?」


「クリームを塗っていくんだ、

後イチゴがあればいいんだが・・・・さすがにバレるからな」


俺は少しづつクリームを塗っていく


「私もやってみたい」

「いいぞ」


アリスはクリームをぎこちなく塗っていくが、中々綺麗に塗れない


「むぅ・・・・難しいね」

「俺も綺麗に塗れるようになるまで時間かかったからな」

「カリムちゃんって私と同い年だよね?」

「そうだな、一応」


「うぅなんか悔しい

女の子の方が料理はうまくないといけないのに」


「別に男ができてもいいんじゃないか?」

「ダメ、女の子としてそこは譲れない」


アリスは頑張っているがなかなかうまく塗れない

そして格闘すること数十分、なんとかケーキが完成した

切り分けてアリスの分を皿に乗せて目の前に置く


「へぇこれがケーキ」

「さぁ食べてみてくれ」

「うん」


パク

アリスがケーキを口に入れた。


「・・・・・・・」

「どうした?口に合わなかったか?」

「ううん!!すっごくおいしい!!」

「そうか、良かった」


俺は胸をなでおろした

一生懸命作ったものを美味しくないと言われたらショックだからな

でもやっぱりイチゴがほしいな・・・・・

ところでワンホールを作ってしまったが食べきれるだろうか?


「ねぇカリムちゃん」

「ん?」

「このケーキ、フィルちゃんにも食べさせてあげたいんだけど、ダメかな?」

「フィル?」

「同い年のお友達なんだけど」

「あぁ・・・あのロングヘアの子か?」

「うん、一番のお友達」


「うーん・・・・まずその友達と話をさせてくれないか?」

「え?いいけど・・・・あれ?話したことなかったっけ?」

「全くない」

「そう、もちろんいいよ、私と違って明るい性格だから話しやすいと思うよ」

「そうか、じゃあ明日話させてくれ」

「うん」

「これは常温保存できないからここで食べてしまおう」

「食べきれるかな?」


パクパク

・・・・・・・・・・・もう半分なくなってる


「どうしたの?カリムちゃん?」

「いや、アリス意外と食べるんだな・・・・」

「え?あ、おいしくてつい・・・えへへ」


甘いものは別腹というが、これ程とは・・・・

その夜、ケーキを食べながらの優雅な時間はすぐに過ぎ去ってしまった

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