これって体質?それとも遺伝?
琳
感じる
―――
私、伊藤明美は霊やその気配を感じてしまう体質である。いや、母親が幽霊が見える(霊感がある)から遺伝かな?
でもそのせいで度々感じたくもないのに感じてしまうので、色々と困っていた。
子どもの頃は感じるどころか普通に見えていた。洗面所で歯磨きをしながらふと気配を感じて振り向くと、階段の上に同い年くらいの男の子がいたのだ。その時の私は別に恐くも何ともなく、その子の方をじっと見ていた。で、いつの間にかいなくなっていたという訳だった。その事を母親に言うと決まって気のせいだと言い張っていたけれど、今になって思えば私が幽霊を見る事が出来るという事を隠したかったのかも知れない。だってその母親は霊感が強くて霊がバッチリ(?)見えてしまうのだから。恐らく遺伝して私も見えてしまうというのがわかったので、必死で誤魔化したのだろう。当時の私は気のせいなのかな~、と思いながらも、何処かで見えてはいけないものが見えたのではないかと思っていた。
小学校に上がると霊感が徐々に強くなっていき、誰もいないはずの家に帰ってきて『ただいま~』と言うと、『お帰り』という声が聞こえる時が何度かあった。それは年のとった男の人の声だったので、亡くなった祖父ではないかと勝手に思っていた。なので聞こえた時はいつも仏壇の前に座り、会った事もない祖父の写真を眺めていた。祖父は父が小学校の頃に亡くなったからだ。そうして学校で起きた事を心の中で祖父に報告するというのが誰にも言えない私だけの秘密だった。
しかし成長するにつけ霊感が薄れたのか、祖父(?)の声は聞こえなくなった。男の子の姿も見なくなり、やっぱり気のせいだと思った時。見えはしないけど霊の気配等を感じる事が出来るのだと知ったのだ。
きっかけは母の車で道路を通った時、ある一部分だけが灰色に見えたのだ。そこは結構昔からある公衆電話で、気になった私は母に聞いてみた。
『何かあそこだけ白黒っていうか、灰色に見えない?』
すると母はビックリした顔で私を見ると、ふぅっと息をついて教えてくれたのだ。
『いるのよ。あそこに女の人が。』
『え……?』
『実はお母さん、霊感があってね。見えるのよ。貴女はたぶん私に似たのね。』
私は呆然とした。でも反面、納得もした。やっぱり気のせいじゃなかったのだと。
その時を期に、霊がいるところは灰色に見えるようになり、いるなっていう気配も感じるようになった。ほとんどの場合は霊自体が悪いものじゃなかったので、特に体に影響があるとか取り憑かれたりとかはなかったけど、たまに凄く恐いものもいたので母に言われて塩は常時持っていた。
それで困っている事というのが、霊がいるところは私にとて鬼門で、そこに行くと必ず迷うという事。
あそこを通ったらあっちの道路に出て右側にはスーパーがあるから左は……という感じで想像は出来るのだが、いざ車に乗ってその場所に行くと絶対に一回は違う場所に出て『あれ?』っとなる。それで調子が悪いとぐるぐる同じ所を回って半泣きして、やっと知ってる道に出て家に辿り着くという具合だ。なので以前はなるべくその場所に行かないようにしていたが、今はナビという便利な物があるので平気だ。文明の利器は凄い。それでも迷ってしまう事もあるが。
後は金縛りは時々ある。その上、近しい人が亡くなった時とかは何となく気配を感じて、次の日に亡くなった事を聞かされて『あ~やっぱり……』となる事も少なくない。きっと最後に会いに来たんだろうなぁ、くらいで別に恐くはないけれど。
という事で、私は霊の気配を感じるタチだ。いや、遺伝かな。
『うらめしや~』とか『一枚……二枚……』とかいう霊には一度も会った事はないし、そんなにホラーな話でもないけれどね。
それでも一言言うならば、道に迷わせないで下さいってお願いしたい。
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これって体質?それとも遺伝? 琳 @horirincomic
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