さよならはペパーミント
天使 ましろ
第1話 ハッカ飴と変な髪色のやつ
「お、お腹空いた.....」
お昼前最後の講義、大きな教室で俺は思った。
朝、ヨーグルトだけだったしなあ…。
プレーンヨーグルトにたっぷりのはちみつ、それが俺の時短朝ごはんのひとつだ。
「ふふっ、ふ、じゃあ飴、食べる?」
「!?.....あ、あめ?てか、声出てた…?」
「うん、はい、キャンディー!」
「!」
そう言って気づかぬうちに隣にいた変な髪色のそいつは俺に飴を渡してきた。まあ、飴でもないよりマシか。
「......って飴ってハッカ飴かよ....」
渡された飴の束は全てハッカ飴だった。
「キャンディーって言ったろ〜....」
とぼそっと愚痴を零す。
「ふふ、ハッカ飴って言わないでよ。ペパーミントキャンディー!」
得意げに言った変な髪色のそいつ。ふにゃっと笑った顔はタイミングよく日差しに照らされて綺麗だった。だけど、
「はい?」
何言ってんのこいつ?へんなやつ。
それが俺のそいつの第一印象。
そしてこれが俺と変な髪色のそいつ改めミントとのはじめての会話だったのだ。
遡ること、三ヶ月前へ。
「なんだあいつ,,,,」
お昼前最後の講義、隣の変な髪色のやつからペパーミントキャンディーもといハッカ飴をなかば強引に渡された俺は、講義終わりに八つの飴とにらめっこしていた。
「お〜い、シュウ!」
夢中でにらめっこしていると友人の暁が俺の名前を呼んだ。
「アキ」
俺はアキこと暁(あきら)へ返事をした。昼前の講義終わりにこうして合流するのが俺達のいつものやり取りだった。
「うわっ!なにそのハッカ飴!シュウ、ハッカ飴好きだったっけ?」
高校からの付き合いで俺の事に詳しいアキは頭を傾げていた。そりゃそうだ。俺は甘党なんだからな。
「なわけないだろ〜、、こんなすぅすぅする飴。喉が痛くなきゃ食べないって。」
「だよなあ〜?じゃあ、なんで?」
「変な髪色のやつからもらった」
「変な髪色???誰そいつ?」
「さあ?」
「あ!まってもしかして、ミント?」
「はあ?誰そいつ。」
ミント?そういえば、名前聞き忘れたな。
「いや、何でもミントカラーの髪色のイケメンが学校にいるんだよ。本人はインシュタやってないんだけどさ、ミントの友達がやってるっぽくよくそいつのインシュタにミントが載るらしいんだけどめっちゃイケメンって話題になってるぽい。」
「へえ、そりゃすごいね、不在のインフルエンサーってか、、」
「お前もイケメンなんだからインシュタやれよ!」
「俺そういうの向いてない…」
「確かに、そういうSNS苦手だもんな、シュウは。あと写真撮られるのも。」
「…」
「...シュウ?」
「え!?ごめん、聞いてる!」
「そう?...」
アキの話にぼーっとして適当に相槌を打ってしまうほど、俺はミントというやつが気になってしまっていた。
「えーっと、これで、…あ、完成?」
「うん、それで完成」
「ほ〜、なるほど、ありがとうな、アキ」
「いや、うん、まじかって心境よ。」
「え?なんで?」
「いやいやいや、あれだけインシュタとかやらなかっただろ?」
「う〜ん、まあ。」
「俺は嬉しいよ、これでお前の良さが世界にわかる!」
「??なんだそれ?せかい???それよりさ、誰をフォロー?すればいいんだ?」
「…。あ、えっとミサキってやつ。misaって打てばすぐ出ない?」
「でた.....」
ミサキってやつのインシュタにはペパーミントカラーの通称ミントっていわれていたあいつがそこにはたくさん写っていた。インシュタのコメント欄には「ミントくん〜!!」、「ミサキくん、ミントくんのお写真ありがとう!」、「ミントくんってなんでそんな透明感なの?いけめん」、「動くミントくん、求む」などなどたくさんのコメントが来ていた。
「やっぱり、こいつどっかでみたような気がする」
さっき会ったとかではなく、そう、もうずっと前から知っている、そんな不思議な、しかし曖昧な。
そんな気が、俺の中で微かに、だけど確実に、揺れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます