第19話 Goodbye Happiness

19.

" Anger 怒り "


 景子が俺の前から姿を消した頃のことが、ブワーっと脳裏に

次から次へと津波のように押し寄せてきて、俺はその晩

一睡もできなかった。



 あの頃、俺はこう思った。


 さとみさんとの関係をもう少し早い時期に止めていたら・・

景子は当初必死で言ってた通り、ずっと俺の世話を焼く為

家に通い続けていたんじゃないかと。


 それにしてもあれだけ復縁の為に頑張ると言っていたのに

1年ももたなかったのだから、景子の俺に対する気持ちなんて

それだけのモノだったのだな・・とか。


 景子の失踪で一番驚いたのは、自分の気持ちの変化だった。


 景子の意志に反していたとはいえ、他の男に抱かれた女など

相手の態度次第でいつでも捨ててやる、と息巻いていたはずの

俺が当時あんなにも喪失感に苛まれるとは・・思いもかけない

ことだった。



 そしてようやくその喪失感とも上手く付き合えるようになった

今頃になって、その原因となる張本人を見つけてしまうとは。


 俺の息子を連れていた景子。


 なんでなんだ!


 当時の比ではないほど俺の心は荒れ狂っていて、自分の手には

追えないほど、激しい怒りと悲しみに襲われた。


 どーして、俺ばかり苦しめられるんだ。

 どーして俺を支えると言ってたお前が、俺をこんなにも苦しめるんだ。


 チクショー!


 


 

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