第6話 ◇Fair フェアー
6.
◇Fair フェアー
俺はアンフェアーなことは嫌いだ。
だからはっきりと妻の景子に宣言した。
俺は石野の妻だった人、さとみさんと付き合うことにした、と。
景子への意趣返しなのか?
はたまた……単純に興味が沸いてしまったのか?
男だから欲がないとは言わない。
欲から、これ幸いと錦の御旗を振りかざし、
景子とは別の女性に触手をのばそうとしているのか?
だが、欲と考えてる時点で俺の中で答えは出ていたのかも
しれない。
誰がもっとも大切な
さとみさんとは、お互いに割り切った関係でよい、ということを
了承しての付き合いが始まった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
離婚して半年が過ぎた頃、部屋に行くとテーブルの上に
育からのメモが置かれていた。
『明日は泊まる準備をしておいで』と。
3ヶ月前から育が石野さとみと親しくしている話は聞かされていた。
育は以前よりそのようなことが有り得ることを私に宣言していて、
宣言通りのことが起きてるっていうだけのこと。
今私が味わってる気持ちを思うと、育は私が感じる何倍もの
嫌な気持ちを味わったわけで、私に文句を言う権利もないし、私は
まるっとそれを飲み込んだ。
この日を境に、育はさとみさんとの付き合いも
私のことも抱き続けてる。
『しようがない』って、一度飲み込んだ気持ちにずっと私は蓋をし続けた。
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