第4ターン(六月)

 第四回:個別マスターより

「今月も『Drハルマゲの危険な世界』に参加してくれてありがとうございます。私信もありがとうございました。

 はい。NPCシトロエンヌはあなたの恋人になりました。

 要塞ダブラースも攻略して、あなたのPC達は大きな前進を成し遂げました。戦勝パーティの描写は気に入ってもらえたでしょうか。

 私信の件ですが、そうですね。あなたの言う通り、最近、放火や通り魔をするPCがにわかに増えてきましたね。

 これはどういう事かというと、物語の流れに乗れなかったり、いまいち目立ってなかったPCが自分に注目を集めたくてやっているんですよ。現状打破を狙っているのです。

 仲間に入りたい、他人を巻き込みたい。けれども気の利いたアクションを思いつかない。そういうPLの叫びですね。

 これらは「放火と殺人はPBMの華」という言葉もありまして、昔からある事らしいのですよ。

 自分が周囲に大きく影響する何かをしたいと思っているのでしょうね。

 『Drハルマゲの危険な世界』はゲーム期間十ヶ月の長丁場ですから一旦ついていけなくなると、残りは人生棒に振るみたいな事になるのが怖いのでしょうか。

 確かにこの様な事は一時は注目PCになれるかもしれませんが、後後の事を考えるといい手とは言えませんね。

 犯罪者という汚名はついてまわりますし、悪役というゲーム内の地位を得たとしても、やってる事が放火や通り魔という刹那的なレベルでは将来も知れたものです。あまり感心出来るものじゃありませんね。

 失うものが何もないんだったら、周囲の利益になる方向で無茶をしたらいいと思います。PBMはいつでも挽回可能です。

 それとNPCキラーの件ですね。

 とにかく初回から地位のあるノン・プレイヤー・キャラクター(NPC)を殺そうと狙っているPCは確かにいます。

 向う見ずに、とか、ついうっかりしてとかではない証拠に彼らは弱いNPCを狙って襲います。

 こういうPCはデータを漁ってもそのNPCを殺そうという動機が見えてこない者が少なくないです。

 PBMの自由度を確かめる為にとりあえずNPCを殺せるか試そうと思っているのか、現実のPLに何か鬱憤があってゲーム内で晴らしたいと思っているのか、NPCよりPCが優位であるのを確かめたいとか、有名NPCを殺せば自分が世界で有名になれると考える愉快犯か。私が心理学等を学んでいれば何か答を導けるのかもしれませんが、正直、はっきりした事は解らないですね。

 ただ、こういう殺伐としたPCも昔からいるのです。

 まあ今だったら現実がこういう状況ですから自暴自棄になって、ゲーム内で鬱憤を晴らそうというPLがいてもおかしくないでしょう。

 ともかくPBMはゲームルール内だったら基本的に自由ですから、即席放火魔だろうとNPCストーカーだろうとMSレベルで止める事は出来ません。私はPCのアクションはなるべく描写する方ですからなおさらです。

 彼らをどうするかはPCレベルの問題ですね。

 PLレベルでは彼らは注目すべき反面教師でもあるのです。それは大事です。

 ただ一言いえば、現実で成功の見込みがない行動はゲーム内でも失敗します。

 それでは次回またお会いしましょう。

 来月もあなたにPBMの守護精霊の御加護がありますように。

 六月某日 百円アイスMS拝」

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