第34話:報告
「領民たちを領地に戻すことができました」
目の前にフォルカーが直立不動で立っている。
両親と一緒にボダルト王国に避難していた領民を迎えに行ってくれたのだ。
クサーヴァとペトロネラの2人は期待通りの働きをしてくれた。
俺が騎士団長に復帰させたクサーヴァと戦闘侍女頭に復帰させたペトロネラは、数は少ないが信頼できる家臣使用人を指揮して俺の願いをかなえてくれた。
「それはよくやってくれた。
領地の方はクサーヴァ騎士団長に城代家老を兼任してもらうから、クサーヴァを信じて一任する。
ところで、フォルカーの後ろにいるのは誰かな。
自己紹介してもらえるかな」
とても知的な雰囲気を持つ女性だな。
何のためにフォルカーを一緒に王都に来たのか大体の想像はつく。
つくが、直接話を聞いた方が正確だし分かりやすい。
大賢者に聞けば何でもわかるのだが、それでは人間味がなさ過ぎるからな。
「公爵閣下、私はマリアと申します。
フォルカー様がよく道に迷われるので、私が手助けに選ばれたのです」
確かにそうだよな、フォルカー1人では王都にたどり着くのは不可能だろう。
だけどそれだけではない、それ以上に厄介な運の悪さがあったはずだ。
普通なら2人ともモンスターや盗賊に襲われたはずなのだがなあ。
このマリアは運のいい子なのだろうか。
「そうかい、よく務めてくれたね、マリア。
フォルカーは信じられないくらい運が悪いから、途中でモンスターや盗賊に襲われたり、がけ崩れや洪水に見舞われたりしなかったかい」
「モンスターや盗賊には襲われましたが、フォルカー様が撃退してくださいました。
戦いの途中で窪みに脚をとられてこけてしまわれたり、折れた枝が落ちてきたり、斃した盗賊が手放した剣が飛んできたりしましたが、その度にフォルカー様が奮起されて切り抜けられました」
やはり信じられないくらい運の悪い偶然に見舞われているのだな。
マリアという女性がついていても運の悪さは変わらなようだ。
だが護らなければいけない女性が側にいるだけで、フォルカーは実力を超える底力を発揮してくれる。
クサーヴァとペトロネラはそれを期待してマリアをつけたのだろう。
「そうか、それはよかった。
だが今度からは無理に報告に来てくれなくていいぞ。
いくらフォルカーが並外れた騎士だといっても、それを超える悪運に見舞われたらマリアまで巻き込まれてしまうからな。
俺はクサーヴァとペトロネラを心から信じている。
だから領地の事は2人に任せる」
「有難き幸せでございます。
2人に成り代わりお礼申し上げます。
それほどの信頼をお受けしているのも申し訳ない事なのですが、2人から嘆願を預かってきております。
どうかお聞き届け願います」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます