第33話:鍛錬と報復

「いっちに、いっちに、いっちに、ぜんた~い、止まれ」


 目の前を連合傭兵団がキビキビと行進している。

 俺が閲兵しているからだろう、ピリピリとした雰囲気だ。

 俺を怒らせる事を極端に恐れている。

 元団長や元幹部連中などは特に怯えている。

 前回の俺がこいつらを叩き直そうと、半殺しにしては治癒魔法をかけて再度半殺しにする事を十度以上繰り返したから、当然と言えば当然だ。


「倒れるまで駆け足だ。

 手を抜いた奴は俺が直接鍛錬してやる。

 一番先に倒れて起き上がれなくなった奴も俺が直接鍛錬してやる。

 嫌なら俺が合格だと思うまで走り続けろ」


「「「「「うぉおおおおお」」」」」


 連合傭兵団の全員が必死で走り出した。

 後先考えずに全力疾走している。

 よほど俺に直接鍛錬されるのが嫌なのだろう。

 まあ、前回の鍛錬を言う名の拷問を思い出せば当然だろう。

 

「ぜぇえ、ぜぇえ、ぜぇえ、ぜぇえ」


 いきなり全力疾走した影響かもしれない。

 腹の横に手をあてて苦しそうにしている奴がいる。

 大賢者、今日叩きのめした方がいい奴はいるか


 ピロロロロ


 ……です。

 愛が386513になりました。


 リヒャルダのお陰で愛がたまる一方だ。

 毎日の濃密な愛が俺をどんどん無敵に近づけてくれる。

 王家に対する方法も、領地を富ませる方法も、領民を幸せにする方法も、俺が独自で考えてきた時とは比較にならない。

 

「おい、お前、手を抜いたな。

 俺の眼を誤魔化せるとでも思ったのか。

 本当に頑張って倒れたのなら最下位でも許してやったのに。

 他の連中が倒れたのを見て手を抜きやがって。

 絶対に許さんぞ、ぶちのめしてやる」


「ヒィヒイヒヒ、本気です本気です本気でやっていました。

 手は抜いていません、死ぬほど頑張ってここで倒れたんです」


 嘘をついても無駄だ。

 大賢者はお前が手を抜いているから最初に見せしめにしろと言っている。

 念のために探知魔術を使ったが、確かに余力を残している。

 俺がゆっくりと近付いて手足を粉砕しようとしているのに、何時まで動けない演技が続けられるかな、糞野郎。


「うっわあああああ」


 案の定だ、立ち上がって逃げ出しやがった。

 やっぱり余力を残して休んでいたな。

 背中を見せて全力で逃げようとしているが、無駄だよ。

 俺から逃げられるはずがないだろう。

 お前は母親が命懸けで逃がそうとした子供を背中から斬り殺したな。

 大賢者から聞いているんだよ、糞野郎が。


「ぎゃっ」


 まずは膝の関節を粉砕してやる。

 動けなくするだけなら太ももでもふくらはぎいいのだが、上手く逃げられて生き延びたとしても、一生障害が残る関節部を攻撃する癖をつけておきたいからな。


「げっふっ」


 さあ、楽しい拷問の時間だよ。

 粉砕されるのが膝だけですむと思うなよ。

 手も足も腕も全部粉々に砕いてやる。

 お前が楽しみ半分で殺してきた人達の恨みを晴らしてやる。

 心配するな、ちゃんと元通り直してやるよ。

 一日一回だけで許されるほど、お前のやってきた悪事は軽くないんだよ。

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