第21話:奴隷商人と剣士

「グズグズするな、さっさと歩け」


「そんな、幼い子供もいるんだ。

 そんな早く歩けるわけがないだぞ」


「だまれ、奴隷の分際で生意気な口をきくな」


「ぎゃっ」


「あなた、やめて、やめてください」


「やめろ、こら、そんな事をしたらシルバーマスク様に殺されるんだぞ」


「へん、なにがシルバーマスク様だ。

 シルバーマスクなんか怖くもなんともないんだよ、クソガキ。

 こちらには護衛の剣士様がいるんだよ。

 ねえ、剣士様」


「ああ、まかせろ、シルバーマスクだか何だか知らないが、田舎の盗人戦士など俺様の敵ではないわ」


「先生、この生意気なガキと親父を殺しちゃってもいいですよね。

 見せしめのためにも最初に何人か殺しておいた方がいいですよ」


「やめてくださいよ、男でもガキでもそれなりに金になるんですよ。

 男のガキの初物に金を払ってくれる好き者もいるんです」


「奴隷商人がこう言っているんだ、やめておけ。

 雇い主からも奴隷商人に損をさせるなと言われているんだ」


「そうなんですよ、新公爵閣下の借金を肩代わりさせていただいているのは、我々奴隷商人なのですよ」


 なるほど、それなりの腕の剣士を雇ったのはミヒャエルだったか。

 かなり追い込まれているようだな。

 具体的にどれくらい追い込まれているかは、剣士を拷問して聞き出せばいい。

 これ以上領民を不安にさせておくのはかわいそうだから助けてやらないとな。


「ちっ、だったら女を抱かせてもらうぞ。

 この娘なら初物だろう」


「ちょっと、ちょっと、金になるんですよ初物は。

 やるんだったらそれ相応の金を頂きますよ」


「ちっ、だったらさっきの女にするか。

 いなか臭い年増の農民女でも女は女だ。

 夫やガキの前で抱けばそれなりに興奮するだろう」


 なんでこういう連中は考えることややる事が同じなんだ。


「やめろ、これ以上の悪行は俺が許さん。

 領主が許可しようが王が命じようが関係ない。

 人の道に反する事は絶対に許さない。

 民を、女子供を苦しめるような奴はぜったいにゆるさねぇえ。

 てめえら人間じゃねぇえ、ぶち殺してやる」


「やかましいわ、お前がシルバーマスクとか言う奴だな。

 飛んで火にいる夏の虫とはお前の事よ。

 雇い主から殺せと言われているんだ、さっさと死にやがれ」


 剣士はそう言うといきなり突きかかってきた。

 王都ではそれなりの名声をえている剣士なのだろう。

 的確に鎧のすき間を狙うだけの腕がある。

 単なる力任せの戦士ではないのは確かだ。


 だが俺の敵ではない。

 それなりの速さとは言っても俺の速さの足元にも及ばない。

 剣士として速さと正確さに特化しているのだろう。

 動きを阻害するような鎧や防具を装備していない。

 だから関節部は軽く斬り飛ばせる防御力しかない。


「ギャアアアアア」


 後は弟子や奴隷商人を殺して領民を開放すればいい。

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