第17話:奴隷商人

 俺たちが民の住む場所を確保している間に、領地はとんでもない事になっていた。

 ウワサを聞いて直ぐにボダルト王国から最も近いアーベントロート公爵家の領地に戻って、村の様子を見に行ったら奴隷商人が偉そうにしていたのだ。


「お許しください、どうかお許しください」


「ダメだ、ダメだ、ダメだ。

 お前たちは借金に返済のためにアーベントロート公爵閣下に売られたのだ。

 王国に訴えてもムダだからな。

 王家が認めて王国が人身売買を許可したのだ。

 お前たち領民は俺たちが買ったんだ」


「そんなぁ、俺たちは四年分の税金を先に納めているんだ。

 それを売り払うなんてひどすぎる。

 売る前に四年分の税を返してくれ」


「クックックックッ、それは残念だが無理な相談だな。

 お前たちが納めたと言っている四年分の税金は、全部この前盗賊に殺されたガンビーノが勝手に集めたモノで、公爵家には小麦一粒も納められていない。

 だからお前たちは公爵家には税を納めていないんだよ」


「そんな、そんなひどい話はないぞ」


「ヒャッハハハハハ、それだけじゃないぞ。

 先払いの四年分だけではないのだぞ。

 過去四年分の税金が未納になっているんだよ。

 お前たちだけでなく、領内の人間全員がな。

 ヒャッハハハハハ、いずれ領民全員が奴隷に売られるぜ」

 

「ひどい、ひどすぎるぞ。

 ランド・スチュワードのガンビーノ様に納めたのだから、主人の公爵家に納めたのと同じだろうが。

 そんなむちゃくちゃな話があるか」


「はん、むちゃくちゃであろうが、それが公爵家と国の決定だよ。

 泣き言なら国王陛下とアーベントロート公爵閣下の言うんだな。

 とはいっても会う事もできないだろうがな」


「「「「「ヒャッハハハハハ」」」」」


 奴隷商人たちが好き勝手な事を言っている。

 もうガマンできない。


「やめろ、なんの罪もない人たちを奴隷にするなど絶対にゆるさん。

 それが例え公爵であろうと国王であろうと絶対にゆるさん。

 民を、女子供を苦しめるような奴はぜったいにゆるさねぇえ。

 てめえら人間じゃねぇえ、ぶち殺してやる」


「シルバーマスク様じゃ。

 シルバーマスク様様が助けに来てくださったぞ」


 俺たちはバッハシュタイン王国に戻って三色のマスクを止めた。

 元のシルバーマスクに戻したのだ。

 俺とフォルカーとリヒャルダの3人が同じシルバーマスクを使ったら、3カ所同時にシルバーマスクとして現れることができるからだ。


 だがそれでもアーベントロート公爵領全ての村や街に同時に助けにいけない。

 どれほどの奴隷商人が集まっているか分からないが、できるだけ早く殺してしまわないと、助けられない領民がでてきてしまう。

 だから時間をかけて苦しめることができずに、全員一撃で頭部を粉砕して殺すことになった。

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