第17話 就労支援を続けた所感
「じゃあ、今日も半日お疲れ様でした」
職員の人が、半日の振り返りを終えた後、挨拶をした。
「お疲れさまでした」
続いて、僕も挨拶をする。
帰り支度を済ませ、タイムカードを切る。
靴を履き、施設の玄関を出る。
「さて、今日も半日頑張ったなぁ」
9月の半ば。僕は現在、就労支援を半日利用している。時間は朝10時から12時の2時間程。作業内容は、スパッツやインナーなどの布製品の糸切りや袋詰め、ティッシュペーパーの箱詰めや箱の接着作業といったような、簡単な軽作業を中心としたものだ。
就業時間の10分前には通所し、諸々の支度を済ませたら椅子に座り、朝礼に参加する。そうして、それが終わったら割り振られた作業に取り掛かる……。そんな日々を過ごしていた。
「さて、帰るか」
少し歩いたところにある駐車場に行き、自分の車に乗り、帰路につく。
就労支援を本格的に始めて3ヵ月。週に3日、月曜と水曜と木曜に通所する生活を送っていた。始めの頃は自分でももっとやれるだろうと思い、週5日連続の出社を提案してみたものだが、早々に断られてしまった。なんでも、最初は様子を見て数日勤務の方がいいだろうということらしい。
この3ヵ月で少しの変化が2つあった。一つは、工賃が上がった事。初めて工賃を貰った時、これからこんな額しかもらえないのかと愕然としていた僕だったが、どうやら、工賃というものは仕事の成果や態度を職員が総合的に判断し、評価することでその額が変動するらしいことが分かった。つまり、僕が真面目に取り組めば取り組むだけ、少しばかりではあるものの貰える額は高くなる訳だ。その点において、僕は他の利用者の人達に比べて有利だと思った。昔からこと文化祭の出し物の準備や設備の準備においては誰よりも真面目に取り組んでおり、それは社会人になっても変わらなかった。他の同期が無駄話をしている時も、僕は黙々と仕事に取り組んでいた。その仕事に対するひたむきさが評価されているのか、最近になって工賃と一緒に貰っている『評価シート』を見るに、「マジメに取り組んでいた」「集中して作業ができている」といったように、それが反映されているようだった。
2つ目は、あまり人が怖くなくなったということだ。就労支援に通い続けるうちに、多かれ少なかれ利用者の人達と顔を合わせる事になる。「施設内ではきちんと挨拶をする」という方針が訓練の一環として設けられているため、半強制的ではあるが、少なからず利用者の人と言葉を交わす機会が出来た。そのため、挨拶自体はもう何も恐れることなくこなすことが出来ている。とはいえ、まだ利用者の人と仕事が終わった後に(と言うのも、仕事中は死後が禁止されているのである)世間話くらいの会話をした事も無い辺り、まだ完全には溶け込めていない気もするが……。
ともかく、この3ヵ月で僕は少し前に進むことが出来ているのは事実。これからも少しずつ、進んで行こう。
うつ病クエスト 暁月 オズ @akatsukiozu000
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