同窓会

霜月かつろう

第1話

 映写機から流れる映像を見えながら、こんな時代もあったねと。だれかが冗談まじに言った。懐かしい歌詞から持ってきているからかその芝居がかったセリフに懐かしさを覚えてしまう。それもそのはずで、卒業以来久しぶりの再会だ。それもしょうがないのかもしれない。

 映写機から映し出されているのは学生時代のサークルの活動報告で作成したもので、一年を通して映像で記録されている。今流れているのはバーベキューの様子だ。こうやって見ると今で言うパリピの分類に入っていたのではないかと思ってしまうほどはっちゃけているし、騒がしく周りの様子を気にしていないのが少しだけ若気の至りだなと思う。数人同じような感想を口にしていたのでみんな大人になったのだと言い訳がましく思ってみる。

 しかし、こうやってまた集まれるなんて思ってもみなかった。当然何人か欠席しているが当時の8割がこうやって集まれることは幸福以外のなにものでもない。

「なあ。なんでこんな会やろうと思ったんだ?」

 誰かが誰かに聞いた。主催者は当時部長だった男だ。しかしその姿は会場にはなく、誰に聞いてもどこにいるか分からないと言う。だからみんな聞きたがっていたんだ。でも誰に聞いていいか分からなくて戸惑っているのも確かだった。そのせき止めていた何かをその言葉が崩した。それによって一気に話題はそのことに集約していく。しかし、誰もが分からないと言った顔になる。

「じゃあ、誰がこの映写機と映像を用意したんだよ」

 だんだんと不安になっていったのか、感情が高ぶった様子の誰かがそう言った。しかし、それに対する返答は誰も持っていない。

 映し出された場面は変わって学園祭で作ったビャンビャン麺を作っている様子に変わった。みんな粉まみれで笑っている。そこで誰かが気付いた。

「ねえ。あれって誰だっけ」

 指さす先に笑顔の女性がいる。その表情を見て鳥肌が全身を這う。ほかのみんなも同じだったようで、自分を抱きかかえるような恰好をしている人が数人いる。

「覚えてないけど知っている」

 そう。そうなのだ。名前も声も出てこない。でも確かにその女性はサークルにいたし、確かに思い出の片隅に今もいるのだ。

「でも忘れてた」

 何人かがそれに対して頷いた。表情はみなすぐれない。

『やっと思い出してくれたね』

 流れるはずのない声が映写機から流れた気がした。

 数個悲鳴が上がるとそれがパニックのスタートとなった。しかし、入ってきた入口はなぜか開かず。明かりはつかず。カーテンを開けても外には木の板が打ち付けられている。窓は防止柵のようなもので守られており、割ることもできない。

『みんなが忘れるからいけないんだよ』

 その声に記憶がどんどん蘇ってくる。後悔の念と一緒にだ。みんなの秘密。そしてそれを無理やり忘れることで、逃げてきた。

 そうだ。だからみんなで集まることなんてしなかったんだ。無意識に思い出すことを避けていたに違いない。でもこうやって集まってしまった。なぜ?誰によって?そんな思いはむなしく消えていく。目の前の恐怖に打ち消されていく。

 ああ。こんなことならちゃんと……。

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同窓会 霜月かつろう @shimotuki_katuro

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