第2話 商人特急、暴走中

「はぁい、こーはいちゃん。こっちこっち!」

「そんなやかましくしなくても聞こえてますよ」

「今日も言葉が鋭いねぇ」


 にこにこと笑いながら手招きするマリリンさんに心の中で中指を立てながら近づく。そりゃ何の用件かも知らせられずに呼びだされりゃ心も荒む。

 マリリンさんの隣には当然のようにヤクチュウさんがいて、さらにここは王都ではなく少し東に行ったところの領地である。名前はベクィン領と言っていた。


 マリリンさんが所有する店の応接室に通される。


「『FMBこっち』で会うのは久しぶりかな?」

「夏休み前以来ですね」


 雑談もそこそこに、本題に入る。入らせろ。


「今回は何の用ですか?」

「まぁまぁ、そう急かさないで。まずはここがどこか、情報を擦り合わせようじゃないか」

「は? ベクィン領と言うんでしょう?」

「うん、合ってるよ。他には?」

「……農作物が有名で、“料理人の聖地”と言われています。野菜、果物、薬草と、幅広い作物を産出しているそうですね」

「大正解。よく調べてるねぇ」

「……で? これがなんだと?」



「——実はね、この街……というかこの領全域、私が牛耳ってるんだよね」

「……は???」


「この領はさ、土地が豊かだから麻薬の原料生産にちょうどいいんだよ」

「“聖地”とは???」

「ハッピーになれるハーブも生産してるから広義では食材」

「広義って言葉で何でも済ませようとするのやめません?」


 拡大解釈がすぎる。


「最近闇金も始めたよ!」

「何やってるんですか」


 本当に何やってるんだ。


「んで、私の与り知らぬとこで、闇オークション開いてるらしいんだよね。許せないよね?」

「話のテンポがおかしいです」


 爆速で進めようとすな。もっとゆっくりやれ。


「と、いうわけでちょっと〆に行こうぜ!」

「もうやだこの人」

「メドゥーサの召喚陣あげるよ」

「やらせていただきます」

「こーはいちゃん、ちょろすぎでしょ」


 うるせぇ、召喚陣のドロップ率舐めんなよ。

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