VSギャング

第1話 文化祭カジノ

 さて、何だかんだで夏休みが終わった。


 二学期が始まるとすぐに文化祭である。土日を使い、外部の人間も集めて盛大に開催された。


 なお、我が文芸部は部誌を出しているのだが、私と部長以外全員絵である。ここは美術部か???

 まぁ部誌を出すと言っても、部室に部誌を積み上げた“ご自由にお取りください”スタイルなので全く問題はない。


 同じクラスの友人と様々な教室を巡り、そこそこに楽しんだ。そして案の定、田上先輩のクラスはカジノだった。


「リアルマネーが賭けられないのが残念だよ……」

「後輩からナチュラルに搾取しようとしないでください。殴りますよ、マリ……ん先輩」


 危ない。普通にプレイヤーネームで呼ぼうとしてしまった。隣の友人がきょとんとしている。聞かなかったことにしろ。


「へー? 橋谷ちゃんが私を名前呼びなんて珍しいねぇ?」


 うっっっざ。


 トランプをシャッフルする手は止めず、雑談に興じる田上先輩。今やっているのはポーカーだ。まずは参加料として、受付で配られたおもちゃのチップを一枚渡す。


「まぁいいけど。可愛いに慕われるのは、私としても嬉しいし……ね?」


 今すぐ右ストレートを決めたい。が、そんなことしたら一発退学ものである。


「……ディーラーがイカサマとか止めてくださいね」

「やだなぁ、そんなことしないよ」

「でしょうね」


 今賭けてるのは本物じゃないからな。


 手札が配られた。


「ベットしますか?」

「賭けます!」

「私も」


 友人が勢い良く言い、三枚ほど机——もとい、緑のテーブルクロスが敷かれたカジノテーブルもどきに置いた。馬鹿のくせに慎重だな。


 私は手持ちのチップをある限り賭ける。


「オールインかぁ……」

「こういうの、好きでしょう?」

「うん、大好き」


 私たち以外の参加者も、続々と賭けをする。


「手札を交換する人はいますか?」


 一通りの流れが終わり、手札をオープンする。


「ストレートフラッシュです」

「……橋谷ちゃんの勝ちだね」


 隣で友人が感嘆の声を上げているが、無視してここらで切り上げる。まぁ、気持ちよく終われて良かった。どうやら私のスコアはランキングにも載るらしい。


 帰り際、小声で呼び止められた。


「また雇いたいんだけど……、前と同じ場所に集合ね」


 ……殴りてぇ~~~!!!

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