第4話 オアシスより
「着いた~~~!!!」
「途中バロさんがサンドワームに襲われてたのはクッソ笑いました」
「動画撮った」
「ナイスです。後で共有してください」
「おけ」
「本人の前で取引しないでくれる???」
「分かりました、いないとこでやりますね」
「そういう意味じゃないんだよな~~~!!!」
「それにしてもサンドワームの召喚陣出ちゃったけど、あれどうすんの?」
「部長の嫌がらせに使います」
「やめたげて」
部長、ガチの虫嫌いでカエルとミミズも無理って言ってたからな。発狂するんじゃなかろうか。
サンドワームの名前どうしよ。砂に棲むものかドールだな。ドールにしよ。
「本当に番長さんって運良いですよね」
「前にそふか——あー、副部長がキレてたよ」
「何故???」
「副部長の推しのSSRゲットしたから。しかも持ってないやつピンポイントで」
「重罪ですね」
「知らなかったんだ! 許してくれ……!」
「知らなかったで済むなら騎士団は要らないんですよ」
まぁ私は推しとかいないから、副部長の気持ちは全く分からないわけだが。
番長さんが容疑者の取り調べごっこを始めた二人を尻目に、辿り着いたオアシスを眺める。
砂漠と境になるようにある緑地。一つの湖から川が流れている。この川を辿って私たちはここに来た。
オアシスを除けば、周りにあるのは砂のみ。ある意味、女神のいた泉とは真逆と言えよう。
そんな開けた土地に大型の魔物がいれば、一発で分かるはずなのだが……。
「フェンリル……いなくないですか?」
「あれぇ?」
バロさんが首を傾げる。番長さんは目の前の風景のスケッチを始めた。抜け目ない。
「眉唾物だったのでは?」
「うーん、あり得る」
「は???」
「いやだって!!! 帝国がつくられたのはかなーり昔だよ!?!? そこから目撃情報も……多分ないし! いるかどうかは確実じゃなかったというか……!」
「多分ってなんです。もしかしてあやふやな情報をもとに私をここに連れてきたんですか?」
「……はい」
「王国に
「それ土に還されるやつじゃん」
「当たり前でしょう」
本当に殺そうかな。ナトを召喚して——
——咆哮。
空気が震える。鼓膜が破れそうだ。
後ろを振り返る。目を凝らすと、砂煙が舞っているのが見えた。
テリトリーに入られ、激怒しているのだろうか。一直線にこちらへ向かってくる。
「番長!!!」
「はーい」
番長さんのチャイナ服の裾が翻る。
オアシスに生える木よりも大きい狼が、番長さんの前で立ち止まった。
一目で分かる。あれが、フェンリルだ。
全部召喚する。ショゴスも、ナトも、シュブ=ニグラスも、ゾンビもグールも。
「総力戦だ」
命令。
「フェンリルを殺せ」
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