第3話 砂漠へ

「それで、何の召喚陣を手に入れるつもりなんです?」

「なんか強くて珍しいやつ」

「無計画把握」


 この人らほんとに計画性ないな。


「夏休みの宿題終わってます?」

「ハハッ、終わってるわけないじゃん」

「私は終わってます」

「番長助けて、こーはいにマウント取られた」

「安心しろ、俺も終わってない」

「頼もしい……!」

「傷の舐め合いですね」

「どうしてそういうこと言うの???」


 ぶっちゃけ宿題を終わらせない理由が分からないんだが。最初の一週で終わるよな? イマジナリー部長が「終わるわけねぇだろふざけんな」ってキレていたが、あの人は完全に遊んでるだけで自業自得なので放置する。


「だってしょうがないじゃん!!! 夏休み中は展覧会あるんだもん!!!」

「まぁバロさんは仕方ないですよね。バロさん“は”」

「え何??? 急に敵になるじゃん。殺しちゃお」

「ようやく我が文芸部から犯罪者イエローネームが……!?」

「いつかやるんじゃないかと思ってました」

「秒で見捨てるじゃん」


 プレイヤーを殺しても、事態が発覚しなければイエローネームになることはない。人目の多いところでぶっ殺さない限り、全力で庇えば事なきを得ることもできなくはないのだ。庇う気ゼロだが。


「あ、いいこと思いついた」

「余計なことですか?」

「いいことって言ったよね!?!?」


 うちの文芸部、余計なこと言うやつ多いから……。


「新しいタイプの魔物を狙いに行こうよ」

「ほう?」

「今どんな魔物が召喚できるの?」


 あんまベラベラ喋りたくないんだが。まぁ、現在は協力体制にあるし仕方ないか。


「スライム、ゴブリン、バフォメット。あと、<死霊魔法>でゾンビと、この前レベルが上がって<死体喰らいグール>が喚び出せるようになりました」


 グールは死体を喰らうと強化されるのだが、ゾンビを食わせてもOKなことが実験してるときに判明した。ゾンビがスタメン落ちした瞬間である。君はこれからショゴスとグールの餌として活躍してもらおう。


「そのメンバーに足りないのは……なんだ???」

「ちなみにスライムのショゴスは魔法、ゴブリンのナトとアンデッドたちは近接、バフォメットは両方ですね」

「隙ないじゃん」

「てかスライム何者???」


 前衛後衛揃えてるから、仲間増やすのは急務でもないんだよな。


「考えんのめんどくさくなってきた」

「おい」

「ごめんて」

「もうなんかてきとーに強そうなのでよくない? バロさんが絵描ければいいんだし」


 雑。


「じゃあ、フェンリルとかどう?」

「『FMB』にもフェンリルとかいるんですね」

「えっ、それわたし知らない」

「火を吹く巨大な魔狼だよ。南西にある砂漠のオアシスに生息してて、南の帝国はフェンリルに追いやられた人々で建国されたらしい」

「随分と詳しいですね」

「って、うーめんが言ってた」


 うーめんって誰やねん。


「あ、梅原のことね」


 番長さんが小声で言った。あぁ、梅原先輩は帝国で活動してるのか。


「まぁ良いですね。フェンリルとかラノベでは定番の強キャラですし」

「行き先は南西にけって~い!」

「それにしても南西かぁ……」

「遠くね???」


「……これさ、リスポーンした方が早くない?」


 ……。


 ナトを召喚する。


「ナト」

「グギャ」

「私含めて三人殺して」

「えっ」「ちょ待っ」


 暗転。

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