第4話 女神は問ふ、女神は答ふ
「ここが件の泉ですか」
「そうだよ」
生い茂る木々の中、不自然だが自然に開けた空間に、一つ大きめの泉があった。
泉の水がきらきらと太陽の光に反射していて、観光スポットか何かにありそうではある。
今その泉を囲んでいるのは、女神と人造人間と黒猫の獣人とスライムとゴブリンとゾンビである。どう見ても神秘的な泉にはミスマッチ。特に後半二つ。ショゴスは可愛いので許された。
「これが、どんな感じになるんです?」
「多分、一度見てもらった方が早いよ」
つれごさんは泉の近くへふわりと浮いていった。うっわ、何だあれ自然すぎて分からんかった。綺麗だな、おい。そもそもつれごさん浮けるのか。まぁ、女神様だからな。まくらさんはスクショすな。
つれごさんが手を前に突き出すと、鉄の斧が出現した。ん……? あぁ、まくらさんの<収納>か。タイミング完璧かよ。純粋にすげーな。
出現した鉄の斧をしっかりと握り込んだ後、手を開き、泉に落とした。
女神が顕現した。
閉じた目が開かれ、つれごさんを真っ直ぐ見つめる。
女神は問うた。
「……貴女が落としたのは、この金の斧ですか? それとも、銀の斧ですか?」
「私が落としたのは、その金の斧だよ」
つれごさんがそう答えると、女神の目が零れんばかりに開かれた。
そして、悲し気に目を伏せて——
「——お前は、嘘を吐きましたね。
………………………………嘘吐き。噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き噓吐き! 嘘つき! うそつき! ウソツキィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」
女神の病的な金切り声が、森林に響き渡る。
美しく整った髪を振り乱し、差し出していた両手の斧を振りかざした。
「来るよ! 前出てまくら!」
「了解!」
まくらさんが大盾を構え、つれごさんの開いた手の中に手斧を出現させる。今更ながらにこれ、まくらさんの負担やばいな。つれごさんのためだから何の文句も言ってなさそうだけど。
私は後方で引き連れていたゾンビたちを前に出しながら、ショゴスと戯れている。皆、死ぬ気でがんばえ~。死んでもいいぞ~。
あ、暇になったナトが女神の方に走ってった。あいつ戦闘狂っぽいところあるからな。お前は死ぬなよ。お前にいくらかかったと思ってるんだ。あの金額ドブに捨てたら心折れるわ。
ショゴスは<水魔法>を<模倣>して、<
女神は金と銀の斧を振り回したり、泉の水を操ったりしていた。
斧はまくらさんが完全に受けているが、泉の水は直線やカーブを描いて襲い掛かかってくる。纏わりついて溺死させようとしているのか、ぶつけて吹き飛ばそうとしているのかは分からないが、盾と手斧じゃ確かに受けきれないだろう。今はゾンビを肉壁にしているが……。
「ウソツキ! ウソツキ! アナタハウソツキィイイイイ!」
「——ッ! <
「<
あ、まずいな。これ。
まくらさんが大きく吹き飛ばされる。斧自体は大盾で防ぎ切ったようだが、勢いまでは殺しきれなかったようだ。まくらさんの<回復魔法>とつれごさんの<付与魔法>でHPは全快になったようだが、崩された戦線はすぐには元に戻らない。
ツルハシを振りかぶったナトに女神の金の斧が迫る。
「送還:
流石にここでナトが死ぬのは許容できない。これで、前線が崩壊した。
肉壁のゾンビは全て死に、水流が波となって私とつれごさんを飲み込まんとした。
「送還:ショゴス」
視界が暗転する。
初戦、敗北。
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