第5話 嘘か実か
あれから何度も挑戦し、その度に死んだ。
デスペナの関係もあり、そうおいそれとは死ねない。そのため、途中からまくらさんが死ぬ、もしくは前線から外れた場合、一時撤退していたこともあり、大分時間を食った。
せっかくだし、リザルトを
「そういや、行動パターンの分析とかしました?」
「それ戦闘中に聞くこと!?!?」
「基本的な攻撃方法は両手の斧による物理攻撃と泉の水を使った魔法攻撃。でも、この行動をしたら次はこれ、みたいなパターン化はされてないね。まぁ、『FMB』の魔物全体に言えることだけど」
「なるほど」
「分析するつれご可愛い!!!」
「それこそ戦闘中に言うことですか???」
この後、普通にまくらさんが殺された。
第2戦、敗北。
「ちょっ! 水かけてこないでよ! このっ! ……え、何でスクショしてるの」
「部長に売れるかなって」
「先輩で小遣い稼ぎしようとしないで!!! あっ」
「南無」
「一旦引こうか」
「そうですね」
第3戦、敗北。
「そろそろっ! 死んで!」
「ダマレ! ダマレェエエエエエエエエ!!! コノ! ウソツキ! ホラフキ! ヤクソクヤブリ! ウラギリモノ! サギシ! ペテンシ!」
「思ったんですけど、この女神語彙力高いですよね」
「無駄口叩いてる暇あったら攻撃してくれない?!?!?!」
「攻撃ならしてますよ、ナトとショゴスとゾンビが」
「人……人? 魔物任せすぎる!!!」
「生身で突撃しろって意味なら女神の前にまくらさんを殺します」
「ごめんなさい。……って、うぎゃー!」
「私の前に女神に殺されましたね」
「撤退するよー」
「了解でーす」
第6戦、敗北。
「は? えっ! 斧ない!?!?」
「あ、ごめん!!! 忘れてた!!!」
「馬鹿! ほんと馬鹿!」
「ありがとう!」
「何罵倒されて喜んでんですか変態」
「変態じゃないよ!!! つれごの言葉が全部嬉しいだけ——あっ」
「あーあ、気ぃ逸らすからですよ。
「ウソツキ! ドウシテキテクレナカッタノ! ズットイッショッテイッタノニ! ムカエニクルッテイッタノニ!」
「んな約束した覚えねーよ」
第17戦、敗北。
「待って! 待って! 一回待とう? 話せば分かる!」
「ワタシハマッテタ。ズットマッテタノニ、アナタハ、アナタハァアアアアアアアアアアアアアアア!!! ……モウ、マテナイ。モウ、マタナイ!」
「そう言わずにさぁ! 果報は寝て待てって言うでしょ?!?!」
「ナンニチモ、ナンカゲツモ、ナンネンモ! ワタシハマチツヅケタ! アナタハコナカッタ! シンジタクナカッタ! デモ! デモ! アナタガサキニウラギッタノ! ワタシノオモイヲ! ココロヲ! ウラギッタノ! ユルサナイ! ユルサナイィイイイイ!!!」
「地味に会話成立してて草」
「笑ってないで助けてぇ!」
「情けない声ですね」
「こーはい、先行ってるねー」
「あ、はーい。私もナトとショゴス送還してから逃げますね」
「堂々と見捨てないで!!!」
「ダレモ! タスケテクレナイ!」
「うるさいよ!!!」
第38戦、敗北。
以上、我々の敗北シーン集である。うーん、思ったより酷い。
挑戦開始から大分日にちは経っている。さくっと殺せると思ってた分、イライラしてきた。何だあいつ腹立つわぁ、殺そ。殺せないんだった。
「さて、そろそろ真面目にやりましょうか」
「今まで真面目にやってなかったの???」
「あれが真面目に見えるなら眼科の受診をお勧めいたします」
「ついでに頭のねじ締めてもらえるとこ探したら?」
「もしかして僕が悪い???」
ちなみに、リトライを続けたのには一応理由がある。
「先程までの戦闘で私とショゴスとナトのレベルが上がりましたし、今度こそガチで行きましょう」
「あ、それが狙いだったの?」
「つれごさん、つれごさん。まくらさんってこんな馬鹿でしたっけ?」
「まくらは産まれたときから馬鹿だよ」
「ねぇ。僕、二人に何かした???」
ぶっちゃけ、女神と戦ってるだけでも経験値は入ってくる。むしろ、ずっと戦ってレベ上げの場にしたいくらいだが、それだとバフォメットの召喚陣が貰えないのでやめておこう。
今までの戦闘で分かったことだが、とりあえず前線が崩壊すると死ぬ。つまり、私の仕事はまくらさんとナトのサポートだ。今回、ナトが割と活躍している。前線張っても問題ないくらい強くなった。そろそろ<進化>が何か教えてほしい。
と、言うわけで女神戦である。
「ウソツキィイイイイイイイイイイイイイイ! ウソツキハァ! ユルサナイィイイイイイイイイイイイァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
いつも通り女神の発狂から始まり、戦闘体制に移行する。
まくらさんとナトが前線(ゾンビは肉壁なので戦力には入れてない)、つれごさんが中衛、そして私、というよりショゴスが後衛だ。まぁ、これはさっきと変らない。
先程までは、各々バラバラに攻撃していた。バラバラと言っても、まくらさんとつれごさんは(斧を渡し忘れた事件を除いて)完全に連携を取れていたし、ショゴスとナトは私が指示を出しているので何の問題もない。
だが、これではペアができてしまっている。
ツーマンセルが悪いと言っているわけではない。ただ、向こうは発狂しつつも攻撃対象は理性的に選んでおり、尚且つ斧による近接攻撃も<水魔法>による遠隔攻撃も可能だ。ペアだと臨機応変にも限りがある。全体の連携が必要なのだ。あと、前衛のまくらさんとナトが連携とってた方が純粋に火力が上がる。
「ナト! ラッシュかけるよ!」
「グギャア!」
今、ナトに指示を出したのはまくらさんだ。一時的にだが、まくらさんの指示を聞くように言っておいた。勿論、優先順位は私の方が上だが。
この女神、隙あらば泉の中心に行って魔法のみの攻撃をしようとしてくる。そうなればつれごさんとうちのショゴス以外、役立たずのお荷物である。故に、まくらさんとナトは常に泉の
ショゴスを頭に乗っけつつ、肉壁ゾンビを増やしていると、女神が泉に斧を叩きつけた。
あ、波が来る。
「ショゴス、泉の水を押し返せたりするか?」
「リ!」
やはり有能だ。可愛い。つまり完璧。
「ナト! 下がって——え?」
「ギャギャッ!?」
前衛の一人と一匹を襲わんとしていた大波が、女神に向かう。恐らくダメージはないだろう。だが、
目くらましとしては、十分だ。
「おりゃー!」
気の抜ける掛け声と共に、まくらさんが大盾を叩きつけ、
「グギャギャギャ!」
ナトがツルハシで首を抉り、
「——死ね」
つれごさんが手斧を投げつけた。
「ドウシテ……?」
女神の頭がぐしゃりと割れた。
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