第3話 死体を連れた黒猫
目的地に行く前に、私たちは“貝塚”に来ていた。私の戦力補充のためである。
ショゴスとナトのレベル上げの片手間に色々実験して分かったことなのだが、どうやら<死霊魔法>は地面に埋まっている死体の数によって、どのくらいゾンビが喚べるかが変わるらしい。仕様としては、死体がそもそも存在しないとゾンビにすることもできないといったところか。
だが、この国はアンデッドが生まれないようにするため、基本的に火葬である。墓地に行ってもゾンビは喚べない。
ならば、ゾンビの数は永遠に少ないままか? と問われれば、その答えはNoである。
何故なら、『FMB』ではゾンビを死体を基につくりだしているからだ。
もっと言うと、死体さえあればゾンビなんていくらでもつくり出せるのである。
そして、貝塚には様々なものが捨てられている。その中には当然、人間の死体も含まれている。
まぁ要は、貝塚に捨てられている死体らをリサイクルしようということである。これをOKにした製作者は倫理観をどこに置いてきたのだろうか。ぜひとも会ってみたい。
「本当にやるの? 罰当たりじゃない?」
「なら火葬場に行って、遺族の方々に“この死体をゾンビにさせてください”って頼みに行きますか?」
「それとんだドクズじゃん……」
「それに罰当たりと言っても、
「確かに! それもそうだね!」
手のひらドリルかな? トンネル掘れそう。
「<詠唱破棄>、<
態々詠唱するのが面倒だったので、<詠唱破棄>してゾンビを喚び出す。喚び出すというよりは起き上がらせるという方が相応しい気もするが。折り重なって積まれてるし。ほら、起きてー。朝ですよー。夕方だけど。
「ヴ、ヴァ゛、ア゛ア゛、ア゛」
「ギュイ゛、イ゛、イ゛」
「ビギ、ガ、ァ」
呻き声を上げながら、緩慢な動きで近づいてくるゾンビたち。
今気づいたが、魔物もゾンビにできるっぽいな。知らんかった。狐みたいなのとか、猪みたいなのとか、燕みたいなのとか……。あ、兎もいる。これ兎好きのヤクチュウさんが見たら泣くな。エグイ。
「うわー! 動いてるきもいきもい!」
「ホラゲーにありそう」
笑いながらテンションが上がっている様子のまくらさんと、淡々と分析するつれごさん。温度差が酷ぇな。
「意外ですね」
「え?」
「まくらさん、ホラーは苦手かと」
ぶっちゃけ、ゾンビを喚び起こした時点で悲鳴上げて逃げるかと思ってた。
「んー、あり得なさ過ぎて興奮してる感じ? 確かに怖いし超ビビってるけど、逃げはしないかな。つれごいるし」
「一人だったら?」
「全力で逃げる」
即答で草。
「まぁ、くだらない雑談は置いておいて……。さっさと案内してください。正確な位置は分からないので」
「雑談始めたのこーはいだよね???」
まくらさんが何かほざいているが、つれごさんがスルーして案内を始めたので私もスルーした。つまり私は悪くない。
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