第6話 感謝と報酬と実験と
「いっやぁー! ありがとね! おかげで交渉がスムーズに進んだよ!!! あっ、これ約束の報酬ね」
「こちらこそどうも。というより、そこまで役に立った気はしないのですが……」
金貨が詰まった袋を受け取りつつ、首を傾げる。ぶっちゃけ、マリリンさん一人で十分じゃなかったか?
「大丈夫! ちゃんと役に立ってたよ!! 何かお相手さんがこーはいちゃんのことめっちゃ警戒してたからねぇ」
「何故です?」
「さぁ? 知らない。気になりはするけど、今調べるには時間もお金も人手も足りないし、後回しかなぁ」
にこにこと、楽しそうに笑うマリリンさん。まぁ、先輩が楽しそうで何よりだ。やったことはゴリゴリの犯罪だけども。
せっかくなのでヤクチュウさんの店でポーション(店内に並ぶ商品は犯罪性のないものである。当たり前だ)を買い、二人と別れた。
部活終了までに時間があることだし、実験をしてしまおう。
結論から言う。このスキルやばい。
さて、何故ここまで語彙力が低下したか説明しよう。
<模倣>は端的に言うと、体内に取り込んだありとあらゆるものを真似るスキルだ。真似というと余り強そうな感じがしないが、事実そうなのだからしかたない。
まず、<模倣>に密度は関係ない。むしろ、関係あるのは体積だ。そりゃそうである。体内に取り込まないと<模倣>できず、ショゴス……というよりスライムという種族が捕食できるのはその個体と同じか、小さいものだからだ。ショゴス≧<模倣>するもの、にならなければならない。
だが、そんな制限よりとんでもないのがありとあらゆるものを真似るという部分である。
突然だが、<錬金術>の話をしよう。何の繋がりもないように見えるが、ちゃんと実験に関係する話だ。
<錬金術>とは、あらゆる物質を別の物質に変換する魔術である。副部長は陽子操作がどうたらこうたらと言っていたが、私は文系なのでよく分からない。部長もスペキャ顔になっていたので、分かってなかったと思う。
鉛を金に、滝の水を酒に、そこらのゴミに価値を見出す<錬金術>だが、当然弱点がある。
それは、時間が経つと元に戻るということだ。
どれだけ高価な宝石に変えたとしても、どれだけ希少な素材に変えたとしても、錬金術師の元を離れればアクセサリーはゴミになり、
マリリンさんはそれを利用して、ヤクチュウさんが製作した毒薬を変換し、「時限式で猛毒に戻る食料」なんて極悪非道のものを作り上げていたが、それは置いておいて。
ショゴスの<模倣>はどれだけ時間が経過しても、ショゴスの意思なしに戻ることはない。さらに、<模倣>したものによって得た効果は、<模倣>を解いても持続するのだ。試しに千切られたショゴス(スライムに痛覚はないので、切り離しても問題ない)が瓶ごとMPポーションを<模倣>した状態で、中身の液体を飲むと、<模倣>を解いても、MPは回復されたままだった。
次に、 スライムにとって体の体積=レベルであることが分かった。『FMB』ではレベル上限が存在しない。が、当然レベルが上がれば上がる程、次のレベルになるまでの必要経験値が多くなっていく。よって、<模倣>した体を削り何らかの形で消費することでレベルが下がり、格段にレベル上げが楽になる。体を削ることによるステータスの逆行はないため、それによりステータスを上げ続けられる。
そして最も重要なのが、<模倣>は魔法や魔術、スキルにも作用することが判明した。例えば、マリリンさんを喰らった場合、ショゴスは<錬金術>が使用できるようになる。
最強では??? うちの子、強すぎ……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます