第6話 一旦帰還

 レベル上げが一区切りついたので、<模倣>の実験を行うこととする。レベルが上がったことでショゴスも二回り大きくなった。

ゾンビを喚び出し、周囲の魔物を狩って自身のレベル上げもしつつ、ショゴスに指示を出す。流石に並行して指示は出せないので、ゾンビたちは簡単な命令をした後、放した。五十体ほど喚んだから、多分二、三分はもつだろう。割に合わない。


「ふむ……大きさから見るに、頭と首くらいならいけるか?」

「テケリ!!」


 元気な返事とともに、ショゴスの体内にある首から徐々に頭が形成された。グロいな。これは録画の方が高値で売れるか?


 <模倣>した生首はショタボに相応しい美少年だった。恐らく、貧民街の子供の死体が“貝塚”に捨てられていたのだろう。頬に大きな傷があったり、眼球やその周辺が腐敗して無残なことになっているが、それでもなお、美しいと断言できる。ふむ、これはスクショだな。


「なんでもいいから<模倣>してみてくれ」

「リ!」


 元気な返事の後、何らかの魔物の牙が現れた。

 今のところ、体内に取り込んだ物体に<模倣>するスキル、といったところか。


 ……そういえば、密度は関係あるのだろうか。今、ショゴスは牙を<模倣>しているが、牙の密度はそこそこ高かった気がする。確か、象牙とかは密度が高いから素材として加工されてきたんじゃなかったっけ。

 そして、しょうもないことを検証した動画を投稿しているプレイヤーがスライムは水に浮くということを証明していた。つまり、スライムは水より密度が小さい。


 ……するか。色々買わないといけないものが増えてしまった。それには金が必要で、金を得るためには仕事をしなければいけない。仕事というとギルドを介した依頼を指すが、ギルドに所属していない私は仲介すら受けられない。かといって、自分自身で仕事を取ってこれるほど何らかの技術があるわけでもなければ、個人的に仕事を紹介してくれる伝手があるわけでもない。


 ……あれ? これ詰んだのでは???


 いやまぁ、を後回しにすれば済む話だが、召喚獣のスキル効果くらいは把握しておきたい。それに、後回しにしたら確実に忘れる。そして、何かきっかけがないと永遠に思い出せない自信がある。情報源ソースは私。メモ帳は持ち物として必須。メモ帳を忘れたら? 死、あるのみよ。


 どうしたものか、と最早もはや無意識下でできるようになった魔物のぶつ切りをしていると——。


 ——プレイヤーネーム:八宝菜から文章が送信されました。


 脳内に声が響いた。


 ???


 は? 何??? てか、誰???


 疑問符を頭に浮かべながらも、ウィンドウを操作し送られてきたという文章を表示させる。


送信者:八宝菜

件名:時間切れ!!!

内容:やぁ皆!!! もうこのテンションで私が誰かは察してくれ!!!!! 流石に文とはいえ本名を曝け出すのには勇気がいる。ほらそこー、お前の辞書に警戒の文字があったんかとか言わない。え? 本題は入れ? おっけー、冷たい対応には慣れてる。任せとけ。

 まぁ、ぶっちゃけ件名で全てが完結してるんだよね。あと十時間でリアルの下校時間十分前くらいになるから、切りついたら戻っといてねー。そいじゃ!!!!!


 ……。


 やけにテンションの高い文面で分かる。これ部長だ。八宝菜ってなんだ。


 まぁ、丁度いい。行き詰ったところで時間切れとは、逆に区切りが良いだろう。忘れないようにリアルに戻ったらメモらなければ。


 その後、ショゴスに餌を適度に与え、レベ上げで消耗したアイテム類を買い込み、私はログアウトした。

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