ミラクルパン
おれたちの船は新大陸を無視して進んだ
何故ならここには何もかもがある
わざわざ新大陸などというものを目指す必要がまるで無いのだと気付いた
無修正ポルノと金太郎飴
それ以外には何も要らない
まさに一つの独立国家だった
死んだ奴は船室に放り込んでおいた
置くだけであとは何もしない
死体は腐らない
奴らに言わせるとどうやら腐るのも面倒くさいようだ
一体、何処で歯車が狂ってしまったのだろう?
学校教育という支配から卒業したおれたちは
窓を割りそのまま港から船を出した
自由という鎖がふくらはぎに絡み付いた
船長は適当に舵をぐるぐると回した
夜
涼しい海風でも浴びようと甲板へ出て来たおれ
先客がいた
月見ロボだった
月見ロボは空を見上げていた
(本当にここには何でもあるんだな………)
感心した
ロボはただ月を眺めるだけの機械だった、暇つぶしに元科学部の連中が作製したらしい
「おもしろいか?」
月を見上げるロボに尋ねた
ロボは言った
「おもしろいとかおもしろくないとかじゃなくてわたしは月を眺めるしかないんです、他には何も無いんです」
申し訳ない気持ちでいっぱいだった
気まぐれで生命を与えられた悲劇、でもおれたちだって似たようなものだよ
ロボの横顔を見ながら憂さ晴らしに甲板を駆け回っていた小動物を蹴り殺した、きゅー
「なんでそんなことするんですか?」
ロボは尋ねた
「暇だから」
それ以外に理由はいるか?
その晩、船内をとびっきりの知らせが駆け巡った
何でもミラクルパンという物が購買部で発売されるらしいのだ
早速おれは発売日に行列に並ぶことにした
「ミラクルパンってどんな味なんだろう………」
先週、発売されたハッピーアイスクリームを凌駕すれば良いのだが
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