配布


おれは配布された弁当を食いながら

狂った

狂ってしまった

「この弁当は安全です」

お前の言葉を信じたのが馬鹿だった

信じる

そいつを惨殺して墓に叩き込め

もしかして今この瞬間、吸い込んでいる空気もやばいんじゃないだろうな?

「はは、そんなわけないだろ」

微量の毒が混じっていた

注視しないとわからなかった

色も匂いも形も無かった

それを継続して体内へと取り込むことを推奨されていた

もちろん名目は違った

おい

おれたちは実験動物かよ?

本当のことを述べた奴は秘密裏に処理される

ある日、突然いなくなって何処か遠くへ旅に出たらしいと残された者は告げられる

おれは弁当を食べていた

海老フライを口の中へ入れた

飛び跳ねた

「新鮮な証拠ですよ」

そうかもな

おれ以外のみんなが縦に頷いているから多分そうなのだろう

おれはおれを手放し

そして白旗が風に舞う

自分が狂ってゆくのを正確に把握しながら

狂うのか?

おれはこの弁当を食べ終わる頃には一体どうなっているのだろう?

おれはまだ食べ終わっていないけれど

配布されたこの毒塗れの弁当を

食べ終わったらそのあとおれはどうしようか?

次の弁当が来るまで待つのか?

どのような姿勢で?

やることを予め決めておけば何も怖いことなんて無い

用意された道に沿って進むだけ

脳死

おれは弁当を食べ終わって

そして直立する用済みの固体でしかなかった


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