第16話 ヒロインがやって来ました
あの後レイナは午後の授業をサボった。
二人に合わせる顔がなかったというか、二人の顔を見たくなかったというか。そして今、自室のベッドで上で大の字になっている。
「やっちまったなぁ...完全に薮蛇だった...これからどうしよう...」
あれだけクレアの気合いが漲っているんだ。なんとしても自分とハインツをくっ付けようと画策して来るんだろう。そう思うと憂鬱でしかない。
せめてもの救いは、これから起きるイベントを自分は知っているということ。だから備えることも可能になる。まぁでも、この間のカレー作りは知っていたのに墓穴を掘った訳だが...
いやアレはクレアが悪い! 平民なのにあの料理の手際の悪さと来たら! 前世、もったいない精神で育って来た一般庶民舐めんなよ! ま、まぁ、それはともかくだ、
「次のイベントは...確か、テスト前の勉強会か」
レイナはバカだ。それも飛び抜けてのバカさ加減だ。成績は最底辺を這っている上に、こうやってしょっちゅうサボってるもんだから目も当てられない。
前世では女子高生だった頃までの記憶しかないが、その当時も負けず劣らずのバカだったから、こうなるのは至極当然の結果とも言える。
クレアは特待生になるくらいだから成績が良いのは当然として、ハインツはどうなんだろうか? 王族なんだから当然、それなりの教育は受けているんだろうし、自分よりバカとは到底思えない。というより自分よりバカな人なんて居るんだろうか? 考えると悲しくなって来るんで止めとこう...
それで勉強会だ。誘って貰えるとしたら正直嬉しい。自分一人で勉強したんじゃ、テストは赤点まみれで終わることになるだろうし。教えて貰えるのはとても助かる。ただ、間違いなく自分は二人の足を引っ張るだけなんで、申し訳ないなという気持ちもある。
それに密室で三人だけになるんだ。クレアはここぞとばかりにら自分とハインツの仲を取り持とうとするんだろうけど、やり方によっては、逆にこっちがクレアとハインツの仲を親密にさせることも出来るんじゃないだろうか?
そんな風にレイナが妄想を膨らましていると、ドアがノックされた。
「お嬢様、入りますよ?」
侍女のエルが入って来た。
「エル、どうかした?」
「お嬢様にお客様がいらっしゃってます」
「私にお客? 誰かしら?」
「クレア様と仰っておいでです」
「えぇっ!? な、なんで!?」
「なんでもお嬢様の忘れ物を届けに来て下さったとか」
「あ~...」
確かにレイナは教室に戻らずカバンもそのままにして帰ってしまっていた。
「お会いになります?」
「当然でしょう。客間にお通しして頂戴」
「畏まりました」
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