第17話 宣言しました
客間に入るとクレアが所在なげに突っ立っていた。
「クレアさん、お待たせして申し訳ありません。どうぞお掛け下さい。エル、お茶とお菓子をご用意して」
「畏まりました」
「ど、どうぞ、お、お構い無く...」
クレアはかなり緊張しているようだ。無理もない。いきなり公爵家の客間に通されたのだ。平民のクレアにとっては雲の上の存在であるはずで、訪ねて来るだけでもさぞや勇気が要ったことだろう。
「そんなに緊張しないで、楽にして下さいね。さ、お茶をどうぞ? お菓子も美味しいですわよ?」
「あ、ありがとうございます...あ、あの、その前にこちらを...」
そう言ってレイナが置いて帰ったカバンを差し出す。
「わざわざ持って来て頂いて申し訳ありません。私、飲み物を買いに行ったら、急に具合が悪くなりましたの...我慢出来ず、そのまま帰ってしまったのですが、こちらからお誘いしておいたのに、断りもなく消えてしまって本当に申し訳ないことをしてしまいましたわね。平にご容赦下さいませ」
そう言ってレイナは深々と頭を下げた。
「い、いえ、そんな、あ、頭を上げて下さい! 気にしてませんから!」
「ありがとうございます」
「そ、それより、お加減の方は...」
「えぇ、幸い大事には至らず、この通り元気になりましたわ。お騒がせしました」
「よ、良かったです...あ、あの、じゃあ私はこれで...」
そう言って席を立とうとするクレアを、レイナが引き留める。
「まぁまぁ、まだいいじゃありませんか。もう少しお話ししましょうよ」
「い、いえ、で、でも...」
「いいから座りなさい!」
「は、はい!」
ここからレイナは取り繕うのを止めることにした。
「ねぇ、あなた。私とハインツの仲を取り持とうとか言ってたわよね? 私達がお似合いだからとも。全力で応援するだっけ? それマジで止めてくんない?」
「と、どうしてそれを!?」
「聞いてたもの。草葉の陰...じゃなかった、草むらの影から」
「えっ!? じゃ、じゃあ具合が悪くなったっていうのは...」
「ウソに決まってるじゃない。あなたとハインツを二人っきりにして、いい雰囲気になって貰おうと思ったのに、あなたときたら...」
「な、なんでそんなことを?」
「あなたとハインツの方がよっぽどお似合いだからよ」
「そ、そんなことは.. 」
「それにもっと切実な事情があるのよ。それはね...」
そこでレイナはいったんタメを作って、
「私はハインツが大嫌いなのよ!」
堂々と宣言した。
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