第14話 仕掛けます
校外学習が終わってから、レイナの日常に変化が現れた。
まず、毎朝下駄箱で待ち伏せしていたハインツが来なくなった。レイナに痴漢呼ばわりされたことが余程堪えたのだろう。教室内でも遠巻きに見てくるだけで、話し掛けたりして来ない。良い傾向だ。もっともっと嫌いになっていって、婚約破棄まっしぐらとなってくれれば万々歳だ。
その代わりというか、別の人にも別の変化が現れた。
「レイナ様、おはようございます」
「...おはようございます」
「今日も良い天気ですね」
「...そうですね」
「あ、髪切りました?」
「...そうですね」
クレアとの距離が一気に近くなった。こうして毎日レイナの元を訪れては、他愛もない会話を交わす。あからさまに邪険にする訳にもいかず、適当に相槌を打っているが、周りからは仲良くしてるように見えるのだろう。
それが続くと、次第にクレアの教室内での立ち位置にも変化が訪れ、前のように孤立するようなことはなくなった。まだ微妙に距離を取ってはいるが、男子とも女子とも恙無く話している様子が見られる。
それはレイナの取り巻きズの停学が明けてからも続き、逆に取り巻きズの三人の方が孤立し始めた。レイナにも近寄って来なくなった為、もう取り巻きとは呼べないだろう。
クレアの変化以外は、レイナにとって概ね歓迎するものであったが、一つ気になることがあるとすれば、ハインツとクレアの距離が微妙に離れたような気がすることだろうか。
少なくとも教室内で親し気に話している様子は見られない。レイナの日課である、放課後の生徒会室観察(という名の覗き)でも微妙な距離感を感じる。
これは由々しき事態である。レイナの婚約破棄においても神SHOTを見るためにも、あの二人には是が非でもくっついて貰わねばならない。
(仕掛けてみるか)
◇◇◇
「レイナ様、おはようございます」
「おはようございます。あの、クレアさん。良かったらお昼ご一緒に如何?」
「まぁ! レイナ様に誘って頂けるなんて嬉しいです! 喜んで!」
「良かったわ。ではお昼に」
「はい!」
(良し! 食い付いた!)
そしてお昼になった。
「クレアさん、お弁当よね? 私、購買でパンを買うから付き合って下さる?」
「喜んで!」
お前は居酒屋の店員か? と、心の中で突っ込みながら購買へと向かう。
「あら? ハインツ様も購買ですの?」
そう、ハインツが毎日購買へ来ることをレイナはリサーチ済みだった。
「れ、レイナ!? あぁ、そうだけど...」
いきなり話し掛けられたハインツは慌てた様子だ。無理もないだろう。ここ最近はお互いに避けてたのだから。
「奇遇ですわね。良かったら私達とご一緒しませんこと? クレアさん、構わないわよね?」
「え、えぇ、私は別に...」
「じゃ、じゃあせっかくだし俺も...」
こうしてレイナの策は見事にハマった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます