第12話 気不味いです

 明日からついに校外学習が始まる。


 班決めで最悪なメンバーと共にすることになってしまったレイナは憂鬱でしかない。いっそのことサボってやろうかと思ってるくらいだ。ただ、休んでしまうと単位にかなり影響が出てしまうため、やむなく参加するしかないのだが。


 とにかく旅行中は誰とも仲良くせず、控え目に過ごそう。いっそ貝になろう。そう心に決めていた。


「それにしても、観光バスも電車も無いこの世界で、どうやって大人数を移動させるのかしら?」


 それがレイナは気になっていた。もっとも大人数と言っても、学年全体で3クラスしかなく、人数も百人にも満たないのだが。


「まぁ、明日になれば分かるか。寝よ」



◇◇◇



「なるほど、こうきたか...」


 今、レイナの目の前には、3頭立ての大きな馬車がズラリと並んでいた。1つの馬車に10人まで乗れるらしい。班ごとにこの馬車に乗って目的地のキャンプ場に向かうとのこと。約5時間程の馬車の旅だそうな。


「着くまで寝ていよう...」


 誰に話し掛けられても無視して狸寝入りを決め込む。そう決心して乗り込んだ...のだが、


「トランプ持って来たんだ。みんなでやろう」


 ハインツの一言でその計画は頓挫した。しかも久し振りにトランプで遊んだので、気付いたら勝負に夢中になってめっちゃ熱くなって楽しんでしまった自分が居た。


 こんなはずじゃなかったのに...



◇◇◇



 馬車の長旅を終えキャンプ場に着くと、そこからは班ごとの自由行動となる。


「ボートに乗ろう」


 ハインツの一言でボートに乗ることになった。そこで問題になるのはボートが2人乗り用、3人乗り用に分かれていることだ。


「私は3人乗りの方に...」


 と、レイナが言えば、


「じゃあ俺も」


 と、ハインツが続く。


「やっぱり2人乗りの方に...」


「じゃあ俺も」


 結局、埒が明かないので、ハインツとクレアと3人で乗ることになった。男同士で乗るハメになったハインツの取り巻きズが不憫でならない。


「レイナ、楽しいね~♪」


 (コイツ、人の気も知らんで呑気に楽しみやがってからに! しかもクレアたんを無視して私にばっかり話し掛けんなよ! クレアたんが貝になってるじゃねぇか!)


 その後もビミョーな雰囲気のままボートは進む。



◇◇◇



 キャンプ場と言ってもテントを張ってそこで寝る訳じゃない。コテージで寝泊まりする。当然、同じ班とはいえ男女別だ。となると必然的にレイナはクレアと同室になる訳で...


「レイナ様、上と下、どっちになさいます?」


「あ、じゃ、じゃあ下で...」


「分かりました。レイナ様は2段ベッドなんて初めてじゃありませんか?」


「え、えぇ、まぁ...」


 (実際は前世で体験済みだけどね)


「なにか不都合があれば仰って下さいね?」


「あ、ありがとうございます...」


「......」


「......」


 (き、気不味い~! なんだこの状況は!?)


 キャンプ場の夜は更けていく。




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